来る(読み)クル

デジタル大辞泉 「来る」の意味・読み・例文・類語

くる【来る】

[動カ変][文]く[カ変]
空間的に離れているものが自分のいる方・所へ向かって動く。また、近づく。
㋐こちらに近づいたり着いたりする。接近・到着する。訪れる。「バスがた」「留守に友人がた」「霜のないうちに取り入れを済ませる」
㋑自分が今いる所を、再び、また以前にたずねる。やってくる。「いつかた町」「また明日ます」
㋒物が届く。「便りがくる」「ようやく注文した本がた」
鉄道・水道などの設備が通じる。「この町にはまだガスがていない」
時間的に近づく。ある季節・時期・時間になる。「春がた」「時間がたので終わりにする」「行く年くる年」
事態が進んで、ある状態に至る。「もはや救いようのないところまでている」「使いづめでがたがくる」「もともと体が弱いところへて、この暑さですっかりまいってしまった」
(「…からくる」の形で)
㋐そのことが原因・契機になってある事態が生じる。起因する。「疲労から病気」「倒産は経営の不手際からている」「信念からくる実行力」
㋑由来する。「ギリシャ語からた言葉」
何かによって、ある反応・感覚・感情が起こる。「ぴんとくる」「胸にじんくる温かい言葉」
(「…ときたら」「…ときては」「…とくると」などの形で)ある物事を特に取り上げ強調して言う意を表す。特に…の場合は。…について言うと。「酒とくると、からっきしだめだ」「甘い物とたら、目がない」
近世語から》恋い慕う気持ちが起こる。ほれる。
「君はよっぽど、どらきちているな」〈逍遥当世書生気質
あるやり方でこちらに働きかける。「数でられたらかなわない」
補助動詞)動詞の連用形接続助詞「て」が付いた形に付く。
㋐少しずつ移行したり、程度が進んだりして、しだいにその状態になる。だんだん…になる。「日増しに暖かくなってた」「最近太ってた」
㋑ある動作・状態が前から続いている。ずっと…する。…しつづける。「再三、注意してたことだが」「改良を重ねて品種
㋒ある動作をしてもとに戻る。…しに行って帰る。「買い物に行ってくる」「外国の事情をつぶさに見てようと思っている」
㋓ある動作・状態をそのまま続けながら、こちらへ近づく。また、そのようにしてこちらへ至る。「敵が押し寄せてくる」「付き添ってくる
[補説](1) 古くは「からうじて大和人むと言へり。よろこびて待つに」〈伊勢・二三〉のように、行く意で用いられる場合がある。これは目的地に自分がいる立場でいうのであって、結果としては1と同じ用法現代でも、相手に向かって「あすの同級会にはますか」という言い方をすることがあるのも、これと同じ発想。(2) 命令形は、古くは「いづら、猫は。こち」〈更級〉のように、「こ」だけの形が用いられ、「こよ」が用いられるのは中世以後。(3) 4㋐は、多くぐあいの悪いことが起こる場合に用いられる。
[下接句]あきれが礼に来る頭に来るかもねぎ背負しょって来るしりが来る鶏冠とさかに来る盆と正月が一緒に来たよう矢でも鉄砲でも持って来い
[類語](1迫る差し迫る押し迫る押し詰まる切迫する近づくやってくるきた訪れる来訪する到着する着く尊敬いらっしゃる見えるおいでになるお越しになるおでましになるお運びになる・お見えになる(謙譲参る伺う参ずる

きたる【来る】[連体詞]

[連体]《動詞「きた(来)る」の連体形から》月日や行事などを表す語の上に付いて、近いうちにくる、この次の、の意を表す。「運動会来る一〇日に開かれる」「来る定期総会において」⇔去る
[類語]じきすぐ直ちに早速じきすぐにすぐさま直接もう間もなく程なく今にそのうちやがていつかいずれ追い追い追って追っ付け早晩日ならずして遅かれ早かれ近日近近ちかぢか近近きんきん後日他日不日又の日近く遠からず上げずぼちぼち今にもそろそろ行く行く目前秒読みカウントダウン追っ掛け時間の問題ややあって今日明日すかさず間を置く時を移さずこの先日ならず

きた・る【来る】[動詞]

[動ラ五(四)]《「きいた(来至)る」の音変化》
やって来る。くる。「米大統領―・る」「冬―・りなば春遠からじ」
使いものにならなくなる。古くなっていたむ。古くさくなる。ぼける。
角琴柱かくことぢはちと―・ったから打ち直させうと思ふよ」〈滑・浮世風呂・二〉
異性に、ほれこむ。
年増としまのお麦めは自己おいらに九分九厘―・ってゐて」〈滑・七偏人・三〉
(動詞の連用形に付いて)…し続けて現在にまで及ぶ。「行い―・る」
[類語]来る迫る差し迫る押し迫る押し詰まる切迫する近づくやってくる訪れる来訪する到着する着く将来今後未来近未来行く末末末前途向後自今目先行く先行く手行く行く行方先行き先先生い先あとのちあとあとのちのち後年他年この後これから向こう

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典 「来る」の意味・読み・例文・類語

きた・る【来】

  1. 〘 自動詞 ラ行四段活用 〙 ( 「き(来)いた(至)る」の変化した語という )
  2. 人や物事がやってくる。
    1. [初出の実例]「韓国(からくに)を 如何に言(ふ)ことそ 目頬子(めづらこ)枳駄楼(キタル)」(出典:日本書紀(720)継体二四年一〇月・歌謡)
    2. 「生まれ死る人、いづかたよりきたりて、いづかたへか去る」(出典:方丈記(1212))
  3. 使い物にならなくなる。
    1. (イ) 物などが古くなっていたむ。
      1. [初出の実例]「すこしきたった小袖をうちかけ」(出典:洒落本・青楼昼之世界錦之裏(1791))
    2. (ロ) 人が年とって衰える。ぼける。
      1. [初出の実例]「大きに来(キタ)りましたテ。世の中に老耄(おいこん)で能ものはごせへませんが」(出典:滑稽本・浮世風呂(1809‐13)四)
  4. 異性に、すっかりほれこむ。ほれる。まいる。
    1. [初出の実例]「年増のお麦めは自己(おいら)に九分九厘来(キタ)って居て」(出典:滑稽本・七偏人(1857‐63)三)

来るの語誌

( 1 )奈良時代にすでに見える語であるが、平安時代になると、漢文訓読系文献では「きたる」、和文系文献ではカ変動詞「く」が用いられ、明確な対立が見られる。
( 2 )訓読系では、和文系の「こさす」に当たる表現として「きたす(「きたる」に対する他動詞)」を用いた。ただし、「きたす」は上代にも例を見ず、訓点語の中で「きたる」に対して意識的に造られた可能性がある。
( 3 )平安時代の仮名文にも「かみの館(たち)の人々の中に、このきたる人々ぞ心あるやうにいはれほのめく(土左‐承平四年一二月二七日)」のように、と見てよさそうな例がある。しかし、「みな月の照りはたたくにもさはらずきたり(竹取)」のように、カ変動詞「く(来)」の連用形に助動詞「たり」の付いたものと見なければならない例もあるため、前の例も二語と考えられる。

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報 | 凡例

今日のキーワード

ゲリラ豪雨

突発的に発生し、局地的に限られた地域に降る激しい豪雨のこと。長くても1時間程度しか続かず、豪雨の降る範囲は広くても10キロメートル四方くらいと狭い局地的大雨。このため、前線や低気圧、台風などに伴う集中...

ゲリラ豪雨の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android