デジタル大辞泉
「居る」の意味・読み・例文・類語
いる〔ゐる〕【居る】
[動ア上一][文][ワ上一]《じっと動かないでいる、低い姿勢で静かにしているのをいうのが原義で、「立つ」に対する語》
1 人や動物が、ある場所に存在する。「ペンギンは北極にはいない」「そこにいるのは誰ですか」
2 住む。滞在する。「ロンドンにいる兄からの便り」
3 移動するのをやめて、そこにとどまる。
㋐静止している。「動かないで、そこにいるんですよ」
㋑すわる。しゃがむ。
「立ちてゐて見れどもあやし」〈万・四〇〇三〉
㋒鳥が、とまる。
「後徳大寺の大臣の寝殿に、鳶ゐさせじとて」〈徒然・一〇〉
㋓雲や霞などがかかり、じっととどまる。
「筑波嶺の嶺ろに霞ゐ過ぎかてに息づく君を率寝て遣らさね」〈万・三三八八〉
㋔船が浅瀬につかえて動かないでいる。
「みさごゐる渚にゐる舟の漕ぎ出なばうら恋しけむ後は相寝とも」〈万・三二〇三〉
4 草や氷などが生じる。できる。
「池などある所も水草ゐ」〈枕・一七八〉
「つららゐて守る岩間の関なればよをへてかたくなりまさるかな」〈堀河百首〉
5 ある地位につく。
「春宮には若宮ゐ給ひにけり」〈宇津保・国譲下〉
6 (「腹ゐる」の形で)怒りが治まる。「腹立つ」に対する語。
「妻の腹ゐにければ、重方がいはく」〈今昔・二八・一〉
7 (補助動詞)動詞連用形に接続助詞「て」が付いた形に付く。
㋐動作・状態が続いて、現在に至ることを表す。「猫が鳴いている」「花が咲いている」
㋑動作・作用の結果が、続いて現在もあることを表す。「枝が枯れている」「窓があいている」
㋒現在の状態を表す。「彼の気持ちはもう変わっている」
[類語](1)居る・居合わせる・控える・存在(尊敬)いらっしゃる・おられる・おいでになる・おわす・おわします・まします・ある/(2)在住する・滞在する
お・る〔をる〕【▽居る】
[動ラ五][文]を・り[ラ変]
1
㋐人が存在する。そこにいる。「海外に何年―・られましたか」
㋑「いる」の古風な、または尊大な言い方。また、「いる」に比べて方言的な響きを帯びる。「君はそこに―・ったのか」「都会にはセミも―・らんようになった」
2 (「おります」の形で、自分や自分の側の者についていう)「いる」の丁寧な言い方。「五時までは会社に―・ります」
3 動詞の連用形に付いて用いる。
㋐(相手を軽蔑する気持ちを込めて)…やがる。「あんなやつに負け―・って」
㋑自分を卑下する気持ちを表す。
「私も隣の京屋にゐ―・ります」〈伎・夕霧七年忌〉
4 (「立つ」に対して)すわっている。
「しきたへの床の辺去らず立てれども―・れどもともに戯れ」〈万・九〇四〉
5 (補助動詞)動詞の連用形に接続助詞「て」を添えた形に付いて用いる。
㋐「…ている」の古風な、または尊大な言い方。「そこに控えて―・れ」
㋑(「…ております」の形で)「…ている」の丁寧な言い方。「ただ今、外出して―・ります」
[補説](1)助動詞「れる」の付いた「おられる」「…ておられる」の形で尊敬表現に用いられる。(2)もとはラ変活用。室町時代以後、四段活用に変化。
[可能]おれる
[類語]居る・居合わせる・控える・存在(尊敬)いらっしゃる・おられる・おいでになる・おわす・おわします・まします
出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例
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お・るをる【居】
- 〘 自動詞 ラ行五(四) 〙
[ 文語形 ]を・り 〘 自動詞 ラ行変 〙 - [ 一 ] ある場所を占めている状態をいう。
- ① そこにある。場所を占めて存在する。
- (イ) 人の場合。自己を卑下したり、他人をさげすんだりする気持の含まれることが多い。
- [初出の実例]「忍坂(おさか)の 大室屋に 人さはに 来入り袁理(ヲリ) 人さはに 入り袁理(ヲリ)とも」(出典:古事記(712)中・歌謡)
- 「つとめてになりて、ひまなくをりつる者ども、ひとりふたりすべりいでて往(い)ぬ」(出典:枕草子(10C終)二五)
- (ロ) 動物の場合。
- [初出の実例]「百済野(くだらの)の萩の古枝に春待つと居(をり)しうぐひす鳴きにけむかも」(出典:万葉集(8C後)八・一四三一)
- (ハ) 無生物の場合。
- [初出の実例]「谷近く 家は乎礼(ヲレ)ども 木高くて 里はあれども ほととぎす 未だ来鳴かず」(出典:万葉集(8C後)一九・四二〇九)
- ② 腰をおろす。すわる。
- [初出の実例]「白玉の 吾が子古日は 明星(あかぼし)の あくる朝(あした)は しきたへの 床の辺去らず 立てれども 居礼(をレ)ども 共に戯れ」(出典:万葉集(8C後)五・九〇四)
- ③ そのままの状態でいる。そこにとどまっている。居を定める。
- [初出の実例]「真袖もち床打ち払ひ君待つと居(をり)し間に月傾きぬ」(出典:万葉集(8C後)一一・二六六七)
- [ 二 ] 補助動詞として用いられる。動作、作用、状態の継続、進行を表わす。
- (イ) 動詞の連用形に付く。多く、自分の言動を卑下したり、他人の言動をさげすんだり、または、軽視できるものの作用、状態について表現したりするときに用いられる。
- [初出の実例]「会はむ日をその日と知らず常闇(とこやみ)にいづれの日まで吾(あれ)恋ひ乎良(ヲラ)む」(出典:万葉集(8C後)一五・三七四二)
- 「私も隣の京屋に居(ゐ)をります」(出典:歌舞伎・夕霧七年忌(1684))
- (ロ) 動詞の連用形に付く。
- (イ) より進んで、動作主をいやしめ、ののしる気持を強く含めて用いられる。…やがる。
- [初出の実例]「はらをたておって、わらはにかぶりつくやうにしおるはなふ」(出典:虎清本狂言・鏡男(室町末‐近世初))
- (ハ) 動詞の連用形に、助詞「て(で)」を添えた形に付く。
- [初出の実例]「二人のたがやしてをるところをとをる」(出典:成簣堂本論語抄(1475頃)信)
- (ニ) ( [ 二 ](ハ)の形の下にさらに「ます」「まする」「まらする」を付けて ) 相手にあらたまって言う場合に用いる。
- [初出の実例]「命にはかへられずかやうに致ておりまらする」(出典:虎明本狂言・花子(室町末‐近世初))
居るの語誌
( 1 )「ゐる」と「あり」との結合したもの。本来、「ゐる」はある場所にすわること、「あり」は継続存在することを意味する。平安時代に入ると、「ゐたり」「ゐたまへり」等の形式が現われ、九五〇年頃から後の和文資料では「をり」の、特に終止法の例が見られなくなる。
( 2 )自己については卑下、他人については軽視の気分を含み、[ 二 ](ロ)の用法はそれが文法的に形式化したものと見られる。
( 3 )近代では、「をる」は「ゐる」に代わって、オラン、オッタカ、知ッテオル、ソコニオレなどのように、話者の尊大な気分を示すようになり、同時に「をります」が「ゐます」をいっそう丁寧にしたものとして用いられる。
( 4 )[ 二 ](ハ)と形式的には同じ用法が既に中古に見られるが、まだはっきりとは補助動詞化していないと考えられる。
出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報 | 凡例
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