日本大百科全書(ニッポニカ) 「大村由己」の意味・わかりやすい解説
大村由己
おおむらゆうこ
(?―1596)
安土桃山時代の儒僧。軍記作者。豊臣秀吉(とよとみひでよし)の御伽衆(おとぎしゅう)。号は梅庵(ばいあん)、また藻虫斎(そうちゅうさい)。播磨国(はりまのくに)三木の出身。禅をよくし和歌・連歌に巧みで外典(げてん)に通じ、大坂中島天満宮の社僧を務めながら秀吉に近侍、その文才と学殖を愛され、天下統合過程の諸事件を軍記や新作能(しんさくのう)詞章につくった。山科言経(やましなときつね)、藤原惺窩(ふじわらせいか)、里村紹巴(さとむらじょうは)らと交流があり、文禄の役には名護屋(なごや)まで供をしたが、帰洛後は病気がちで活動は鈍った。主要な作品は秀吉の生涯を描いた『天正記(てんしょうき)』で、『播磨別所記』『柴田合戦記』『関白任官記』『紀州御発向記(ごはっこうき)』『四国御発向并北国御動座記(ごどうざき)』『九州御動座記』『聚楽行幸記(じゅらくぎょうこうき)』『小田原御陣』が現存、新作能の詞章に『高野参詣』などがある。
[朝尾直弘 2017年5月19日]
『桑田忠親著『豊太閤伝記物語の研究』(1940・中文館書店)』▽『小高敏郎著『近世初期文壇の研究』(1964・明治書院)』