翻訳|observable
原子や素粒子などの微視的世界では、個々の物理量が、これらの微視的世界の物理的状態すなわち量子的状態に作用する演算子となっている。演算子の形をとった観測可能な物理量をオブザーバブルという。オブザーバブルは、ディラックが量子力学を一つの理論体系にまとめあげる際に導入したものである。物理量が位置座標xと運動量pの関数として表されている場合、物理量の演算子は、運動量を-iħ(∂/∂x)で置き換えたものになっている。ここでiは虚数、ħはプランク定数hを2πで割ったものである。たとえばx方向の運動の運動エネルギーp2/2mの演算子は(-h2/2m)∂2/∂x2となる。mは粒子の質量である。
日常目にする現象では通常、物理量はある範囲の値を任意にとることができるが、これに反し量子的状態のとる物理量の値、すなわちその測定値は、オブザーバブルという演算子の固有値に限られている。固有値を物理量の値とする量子的状態はオブザーバブルの固有状態になっている。一般の量子的状態は、有限個あるいは無限個の固有状態の重ね合わせになっているため、物理量を多数回測定したときの測定値の平均は、個々の固有状態の固有値を、この固有状態の重ね合わせの重みで平均した値になっている。
[田中 一]
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
…またスピンのように古典力学のなかに対応する量がないものもある。そこで,量子力学において自己共役な演算子をもつ物理量をとくに観測量(オブザーバブル)とよぶ。なお,物理量に対応すべき演算子に自己共役性を要求する物理的根拠は,この特性が次のことを保証し観測の確率解釈を可能にするところにある。…
※「オブザーバブル」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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