オブザーバブル(読み)おぶざーばぶる(英語表記)observable

翻訳|observable

日本大百科全書(ニッポニカ) 「オブザーバブル」の意味・わかりやすい解説

オブザーバブル
おぶざーばぶる
observable

原子素粒子などの微視的世界では、個々物理量が、これらの微視的世界の物理的状態すなわち量子的状態に作用する演算子となっている。演算子の形をとった観測可能な物理量をオブザーバブルという。オブザーバブルは、ディラック量子力学を一つの理論体系にまとめあげる際に導入したものである。物理量が位置座標xと運動量p関数として表されている場合、物理量の演算子は、運動量を-iħ(∂/∂x)で置き換えたものになっている。ここでi虚数、ħはプランク定数hを2πで割ったものである。たとえばx方向の運動の運動エネルギーp2/2mの演算子は(-h2/2m)∂2/∂x2となる。m粒子質量である。

 日常目にする現象では通常、物理量はある範囲の値を任意にとることができるが、これに反し量子的状態のとる物理量の値、すなわちその測定値は、オブザーバブルという演算子の固有値に限られている。固有値を物理量の値とする量子的状態はオブザーバブルの固有状態になっている。一般の量子的状態は、有限個あるいは無限個の固有状態の重ね合わせになっているため、物理量を多数回測定したときの測定値の平均は、個々の固有状態の固有値を、この固有状態の重ね合わせの重みで平均した値になっている。

田中 一]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「オブザーバブル」の意味・わかりやすい解説

オブザーバブル
observable

観測量ともいう。量子力学系において,原理的に観測可能と考えられる物理量をいう。量子力学では,物理量は状態ベクトルに作用する自己共役な線形演算子で表わされる。すなわち,この演算子の固有値は実数であり固有ベクトルは完全系をなす。普通は物理量といえばオブザーバブルをさすが,オブザーバブルでない物理量もしばしば用いられる。

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