翻訳|operator
作用素ともいい、一般には写像とほぼ同義の内容をもつ。とくに線形空間や関数空間で用いられることが多く、たとえば関数f(x)を他の関数g(x)に変換するとき、それを
g(x)=Tf(x)
のように書いて、Tを演算子という。演算子はしばしば一定の計算規則で指定されている。たとえば、演算子法でよく用いられる微分演算子Dは関数f(x)を微分してf′(x)をつくることを意味し
Df(x)=f′(x),
D2f(x)=D[Df(x)]=f″(x),……
である。
空間の点(x,y,z)で定義された関数f(x,y,z)では偏微分が問題になるが、ベクトル解析の記法として、次のような演算子がよく用いられる。
∇はナブラと読み、∇fは関数fの勾配(こうばい)ベクトル、Δはラプラシアン(ラプラス演算子)という。また、点(x,y,z)にベクトルの値
V(x,y,z)=(f(x,y,z),g(x,y,z),h(x,y,z))
を対応させる関数に対し、
によって、演算子div(発散)とrot(回転)を定義すると、
divV=(∇,V),
rotV=∇×V
などの関係があり、演算子∇をベクトルと同様に取り扱うことができる。
[洲之内治男]
数学のさまざまな概念や手法は可能な限り物理学のなかで用いられてきた。演算子もその一つであるが、とくに電気工学者であったヘビサイドが電気回路の解析をきっかけに演算子法を開拓したという事情もあり、今日物理学のなかで演算子は非常に多彩に用いられている。物理学のほとんどの部分が線形物理学であるから、物理学に表れる演算子は多く線形演算子であり、線形空間あるいは関数空間の一次写像として扱われる。
演算子がとくに重要な役割をもつのは量子力学の分野である。量子力学では、測定により得られる結果は確率的なので、「ある量」とその「測定値」とは区別されなければならない。このため状態を表す関数(状態関数)と、それに作用する「ある量」を表す演算子を考える。演算子を作用させた結果が定まった数値を与える場合はとくに重要で、このような場合、演算子は「物理量」を表している。すなわち、一つの測定の結果がかならず一義的に定まっている。これが量子力学における測定の基礎を与える。このときの状態はその物理量の固有状態といわれ、演算子の固有関数である。そして一般の状態はこれら固有状態の重ね合わせで表される。このように、量子力学ではすべての物理量は演算子で表され、その演算子は重ね合わせの原理により線形であり、また観測値はすべて実数であるという要請から自己共役(きょうやく)性(エルミート性)をもつ。
演算子は一般に作用させる順序を交換できないから、それで表される二つの物理量は、順序を入れ替えて状態に作用させたとき、等しい結果を与えない。すなわち同じ測定値は得られない。このことが不確定性原理の内容であり、とくに二つの演算子が交換可能な特別の場合にだけ、その二つの物理量は同時に観測可能となる。
[藤村 淳]
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…関数に対する微分や積分の演算を記号的,あるいは代数的に行い,微分方程式を形式的に解く手法を演算子法という。19世紀の終りころに,イギリスの工学者O.ヘビサイドが電気工学におけるいろいろな現象を記述する常微分方程式や,電信方程式と呼ばれる偏微分方程式を解くのにこの手法で成功をおさめて以来,演算子法はまとまった一つの理論となった。…
…また連続関数の列の一様収束の極限は連続関数であるから,Cにおける収束とは関数列の一様収束のことであると約束することにより,ふつうのユークリッド空間における点列の収束と同様な取扱いができる。さらに,関数を微分する操作や積分する操作を関数から関数への対応と考え,このような対応を作用素,または演算子という。このようにベクトル算法と収束概念の定義された空間の構造や,その空間における作用素の性質を一般的に調べることにより,従来は別個のものと考えられてそれぞれの方法で取り扱われていたいくつかの理論が,統一された簡単な方法で,より一般的に扱われるようになり,また他方において,多くの新しい事実を導くことができるようになった。…
…は,たとえば水素原子の電子の場合でいえば,電子の質量をm,電荷を-e,真空の誘電率をε0として,の形であり,電子の位置座標に相当するr=(x,y,z)の関数ψt=ψt(x,y,z)に作用してこれを別の関数に変える働きをもつ。この種の働きをもつものを一般に演算子とよぶ。そのもっとも単純なものは関数をxで微分する微分演算子∂/∂xである。…
※「演算子」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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