ベルギーの地図学者。アントウェルペン(アントワープ)に生まれ、生涯をそこで過ごした。イギリス、フランス、イタリアを旅行し、メルカトルらの地理学者と親交があった。最初の地図学での業績は、1564年の8枚からなる世界大地図の制作で、1565年には2枚からなるエジプトの地図、1567年にはアジアの地図を出版した。多くの地図を収集し、その表現を統一して新たに編集したのが、有名な『世界の舞台』Theatrum Orbis Terrarumという地図帳で、ヨーロッパ最初の完備したものとして有名。この初版は1570年5月20日付けで、70枚の地図を53ページの地図帳としたものであるが、需要が多かったのでさらに2版を重ねた。そのうち1595年版には日本図が加えられたが、これは単独の日本地図としてはヨーロッパで最初のものである。
[市川正巳]
フランドルの地図作家,地図出版業者。アントワープに生まれ,ギリシア語,数学を学び,20歳のとき地図彩色画家として自立し,地図の販売にも携わった。彼を有名にしたのは,彼の著作《世界の舞台Theatrum orbis terrarum》(1570)で,大航海によってもたらされた新情報を十分に盛り込んだ世界地図帳だった。その影響は大きく,以後の1世紀は〈地図帳の時代〉と呼ばれる。1612年までにラテン,オランダ,フランス,ドイツ,スペイン,イタリア,英語の各語版が次々と版を重ねたほか,追加増補版が5回にわたって刊行された。彼の地図作成はこの地図帳の刊行以前から始まっており,《世界図》(1564),《エジプト図》(1565),《アジア図》(1567)などがある。1585年イタリアのパドバ市を訪れた天正遣欧使節は,その地の公立植物園のドイツ人植物学者から《世界の舞台》を贈られている。
執筆者:海野 一隆
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…メルカトルを生んだフランドル地方は,16世紀半ばから17世紀半ばに至る間,地図学の中心として多くのすぐれた地図作成者を輩出させた。なかでもメルカトルと同時代のオルテリウスは1570年世界の各地域をほぼ均等に扱った斬新な内容の地図帳《世界の舞台》を刊行し,以後約1世紀にわたる〈地図帳時代〉の幕を開けた。 17世紀後半になると,地図学の中心はパリに移り,王室地理学者サンソンN.Sansonは1658年均整のとれた正弦正積図法(サンソン図法)を駆使した地図帳を刊行した。…
※「オルテリウス」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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