アメリカの女性作家。ニューヨーク州ロックポートに生まれる。1960年に同州のシラキュース大学を卒業。61年ウィスコンシン大学でイギリス文学修士号を取得。63年、最初の短編集『北門のかたえで』を発表、まさに彗星(すいせい)のごとく60年代の文壇に登場。カナダのウィンザー大学でイギリス文学の教師を務めるかたわら、現代作家のなかでももっとも多作家とよばれるほど精力的に作品を発表している。その作品の特質は、代表作の長編『かれら』(1969)にうかがえるように、平凡な日常生活を送る人間の内面に潜む異常にグロテスクなもの、ゆがんだ残忍さ、暴力性などを、自然主義的な手法で文学的現実に移しかえようとすることにある。ほかに『贅沢(ぜいたく)な人びと』(1968)、『ワンダーランド』(1971)、『私をお好きなように』(1973)、『暗殺者たち』(1975)、『チャイルドワルド』(1976)、『朝の子』(1978)、『ブラッズムア・ロマンス』(1982)、ケネディ家第三の悲劇を小説化した『ブラックウォーター』(1992)、1950年代のニューヨークを舞台にした勇敢な少女たちの物語『フォックスファイア』(1993)、短編集『愛の車輪』(1971)、『結婚と不倫』(1972)、『ナイトサイド』(1977)、『心を集める者』(1998)、詩集に『不明の罪』(1969)、『天使の炎』(1973)、『タイムトラベラー』(1989)、『テンダーネス』(1996)、エッセイに、D・H・ロレンスを論じた『敵意ある太陽』(1973)、野蛮で孤独な闘いに賭ける男たちへのオマージュ『オン・ボクシング』(1987)などがある。
[筒井正明]
『村上博基訳『愛の車輪』(1972・角川書店)』▽『大橋吉之輔・真野明裕訳『かれら』(1973・角川書店)』▽『古沢安二郎訳『贅沢な人びと』(1978・早川書房)』▽『植村洋・山口哲生訳『J・C・オーツ作品集 サンデー・ディナー』(1982・弓書房、鷹書房発売)』▽『北代美和子訳『オン・ボクシング』(1988・中央公論社)』▽『中村一夫訳『オーツ短編集』(1988・成美堂)』▽『橋本宏訳『オーツ秀作短篇集』(1991・三修社)』▽『中野恵津子訳『ブラックウォーター』(1992)』▽『中村一夫訳『エデン郡物語――ジョイス・キャロル・オーツ初期短編選集』(1994・文化書房博文社)』▽『別府恵子編『ジョイス・キャロル・オーツ作品選集』全12冊(1998・臨川書店)』▽『井伊順彦訳『フォックスファイア』(2002・DHC)』▽『杉田豊子著『J・C・オーツの小説考』(1985・リーベル出版)』▽『キャロリン・アンソニー著、松岡和子・前沢浩子訳『ファミリー・ポートレイト――記憶の扉を開く一枚の写真』(1994・早川書房)』▽『鈴江璋子著『アメリカ女性作家論』(1995・研究社出版)』▽『宮内敦夫著『小説の語法と文体――J・ロンドン、C・オーツ、W・ゴールディング』(1996・文化書房博文社)』▽『岩田強著『オーツ「大陸の果て」を読む』(1996・大阪教育図書)』▽『早瀬博範著『アメリカ文学と狂気』(2000・英宝社)』
アメリカの女流小説家,詩人。ニューヨーク州ロックポート生れ。シラキュース大学からウィスコンシン大学に進み修士号を取得後,デトロイト大学,カナダのウィンザー大学で教え,プリンストン大学教授。処女短編集《北門にて》(1963)以来,精力的に作品を発表しつづけ,現代アメリカでもっとも多作な作家といわれる。リアリズムの手法で日常生活の中の暴力や殺人を扱い,人間性にひそむ残忍さや現代社会の歪みを描いた作品が多い。《かれら》(1969)は1930年代から黒人暴動のあった67年まで,デトロイトに住む一家の生活を年代記ふうに描いた大作で全米図書賞を受賞した。短編作家として定評があり,短編集に《大洪水の上で》(1966),《女神と女たち》(1974)などがある。その他詩集として《天使の炎》(1973)などがある。
執筆者:井上 謙治
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