改訂新版 世界大百科事典 「カザリドリ」の意味・わかりやすい解説
カザリドリ (飾鳥)
cotinga
スズメ目カザリドリ科Cotingidaeの鳥の総称。中央・南アメリカの熱帯地域に分布している。もっとも小さい種はキクイタダキカザリドリCalyptura cristataで全長約8cm,最大種はカサドリCephalopterus ornatusで全長約50cmもある。しかし,大部分の種は全長15~20cm。一般に雄は雌より美しく,種によって白色,紫色,緑色,赤色などの鮮やかな色で目だつ。また,一部の種の雄にはそれぞれ独特な形の冠羽,みの毛,喉部(こうぶ)の気囊などが発達していて,このためカザリドリの名がついた。くちばしは比較的大きく,上くちばしの先端は短いかぎ状で,果実や昆虫類を主食とする。中央アメリカに10種(そのうち6種は特産種),南アメリカに55種が分布し,主として熱帯の森林の樹上で生活している。つがい形成のときには特異な行動を行うものが少なくない。例えば,スズドリ類(Procnias属3種,英名bellbird)の雄は,その名のとおり,樹上で非常によく響く声で鳴いて雌を引き付け,ディスプレーを行う。ハゲガオカザリドリPerissocephalus tricolorでは,数羽の雄が森林中の何年も引き継がれた同じ場所に集まり,樹冠かそれよりやや下層の枝に止まって,ウシの声のような響きのある低い声で鳴き合い,これに雌が引き付けられて交尾が行われる。イワドリRupicola rupicolaは,全長約30cm,雄は冠毛,翼,尾の一部分に黒色部があるほかは,ほぼ全身が美しい橙色,雌は全体にじみなオリーブ色を帯びた褐色をしている。この種も,何年も引き継がれた森林のある地域に数羽の雄が集まり,雄鳥は林床の一部分の小枝や木葉を取り除いてそれぞれ所有し,この占有地や近くの枝上でディスプレーを競い合う。雄の集団ディスプレー競争にひかれて雌が集まってくる。ハゲガオカザリドリやイワドリは,おそらく乱婚性と考えられているが,どの種についても繁殖生態は詳しく研究されていない。
執筆者:安部 直哉
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報