日本大百科全書(ニッポニカ) 「カシューノキ」の意味・わかりやすい解説
カシューノキ
かしゅーのき
cashew
[学] Anacardium occidentale L.
ウルシ科(APG分類:ウルシ科)の熱帯性常緑樹。カシューナットノキともいう。西インド、中央アメリカ原産で、熱帯各地に広く栽培される。主産地はベトナム、ナイジェリア、インドで、アメリカやヨーロッパ諸国に輸出し、コートジボワール、フィリピンなどでも生産される。樹高12~15メートル、葉はやや革質の倒卵形で長さ15~20センチメートル。花は白または淡紅色で、両性花と単性花が混じって小枝に群がって開く。花期後、花托(かたく)部分が膨れて径約5センチメートルの西洋ナシ形になり、カシューアップルcashew appleとよぶ。カシューアップルの先(下)に腎臓(じんぞう)形、灰色で硬い殻(果皮)に入った長さ3~4センチメートルの果実がつく。この果皮の中に褐色の種皮に包まれた勾玉(まがたま)状の仁、つまり、カシューナッツが入っている。果皮には黒い油性の、ウルシに似た性質の液体を含む。液体の成分はカルドーというフェノール物質とアナカルジック酸などの有毒物質で、精製してカシューワニスをつくる。これはシロアリや害虫を防ぐのに用いる。樹皮からは黄色のゴム物質がとれ、本を綴(と)じる糊(のり)に使うと虫がつきにくい。また黄色染料にも使われる。材は赤褐色、硬さは中庸で各種の細工物に使う。民間薬や観賞用にもされる。
[星川清親 2020年9月17日]
食品
カシューアップルは外面は鮮紅色からクリーム様黄色まであるが、内部は淡黄色で芳香をもち、多汁で甘味、酸味ともにあり、渋味もあって特異の味があり、食用とする。グルコーゼ8.4%、タンニン3.06%を含むといわれ、生食のほか、清涼飲料(カジュアーダ)、ジャム、砂糖菓子、カシュー酒などをつくる。果実のカルドールやアナカルディア酸などは炒(い)ると消去される。ナッツの王様といわれるカシューナッツは100グラム中の熱量は571キロカロリーで、タンパク質19.6%、灰分2.7%、脂質47.2%、糖質25.4%などを含む。
[飯塚宗夫 2020年9月17日]