改訂新版 世界大百科事典 「カストリ雑誌」の意味・わかりやすい解説
カストリ雑誌 (かすとりざっし)
1946年ごろから数年間にわたって発行された大衆的娯楽読物の俗称。第2次世界大戦後,それまで統制されていた言論活動はせきを切ったように活発になり,当時は活字であればなんでも売れた。戦中の統制下で休刊を余儀なくされていた雑誌《新潮》《文芸》が45年に,《中央公論》が46年に復刊され,同年には《世界》《展望》なども創刊されている。このような状況の中で目だったのがカストリ雑誌である。これらは戦中抑圧されていた性の解放が一気に噴出したものといえ,内容はほとんどが性風俗を中心とし,刺激の強さを売物にした。カストリ雑誌の代名詞のようにいわれている《りべらる》(太虚堂書房,1946創刊)は,実は,武者小路実篤,大仏次郎,亀井勝一郎なども執筆しており,いわゆるカストリ雑誌ではない。むしろ,戦後発禁第1号になった《猟奇》(茜書房,1946創刊)が代表的なものといえよう。そのほか《実話雑誌》(実話雑誌社,1946創刊),《共楽》(蓬書房,1946創刊),《妖奇》(オールロマンス社,1946創刊)など,発行点数は50年ごろまでに約200点にのぼるといわれる。これらの雑誌は統制外の再生された粗悪な用紙(仙花紙)を使用した。カストリ雑誌の俗称は,当時かすとり焼酎などアルコール分の高い密造酒がでまわっていたが,これを3合も飲むと酔いつぶれてしまうところから,これらの雑誌も3号で休・廃刊になるものが多かったことにかけて生まれたという説がある。
執筆者:清田 義昭
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報