改訂新版 世界大百科事典 「カズノコグサ」の意味・わかりやすい解説
カズノコグサ
Beckmannia syzigachne(Steud.)Fernald
水田等に生える越年生のイネ科の雑草。全体にやや淡い鮮緑色でやや軟らかい。茎は株となりやや太目で,高さ30~90cm,中空で数節がある。葉は幅広い線形で,長さは20cmに達し,幅は5cm内外である。5月ころ茎の頂に細長く鮮緑色の円錐花序を出し,長さは10~20cmほどで,その短く立った側枝の片側に小穂を密生する。小穂は横に長目の円形で,長さは2mmくらい,左右に扁平となって積み重なった状態で穂となるので,穂が横から見るとかずのこの印象を与える。穎(えい)は左右から扁平となって,背部がはみ出した袋状で,1~3個の小花を挟むように包む。温帯に分布し,日本の北海道から九州,中国の中部・北部,朝鮮半島,沿海州に見られる。種子は食用とされたことがある。また雑草ではあるが,多少耐塩性のあるところから海岸の湿地または内陸の塩湖等で牧草として利用可能である。以前にはこの草をミノゴメと呼んでいたが,本当のミノゴメはムツオレグサのことであるから,牧野富太郎が本種にカズノコグサの名をつけた。
執筆者:小山 鐵夫
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報