日本大百科全書(ニッポニカ) 「カワイルカ」の意味・わかりやすい解説
カワイルカ
かわいるか / 河海豚
river dolphin
哺乳(ほにゅう)綱クジラ目カワイルカ科に属するハクジラの総称。この科Platanistidaeの仲間は、アマゾンカワイルカ、ガンジスカワイルカ、ラプラタカワイルカ、ヨウスコウカワイルカなど4属4~6種があり、東南アジアと南アメリカの温帯、熱帯に分布する原始的なイルカである。中新世には広く分布したが、現在では近代的なマイルカ類のイルカに圧迫されつつある。体長1.7~2.6メートル。吻(ふん)は細長く、上下左右に各二十数本から60本の歯をもつ。7個の頸椎(けいつい)は一般のイルカと異なり全部遊離している。背びれは小さいが胸びれは大きく広がり扇子状をしている。目は退化の傾向を示し、河川にすむ種ではとくに著しい。これらの種は音波(160~190キロサイクル)を発し、その反射音によって餌(えさ)となる魚やエビを探知する。海産のラプラタカワイルカでは、魚の発する音や発光を手掛りに索餌(さくじ)すると思われる。一部の種類では食物の貯蔵所である食道胃を失っている。頭骨の形態も種間の差が大きく、全種がかならずしも近縁な種類ではないことを示している。脳は体重の1%以下でマイルカ類に比して小さい。マイルカ類と異なり、親子、つがいで行動し大きな群れはつくらない。河川にすむ種類では、ダムや排水路の建設によって生活環境が破壊されたり、マイルカ類の侵入によって生存が脅かされる可能性がある。
[粕谷俊雄]