翻訳|gangrene
壊死(えし)に陥った組織が腐敗菌による感染を受けて腐敗し,黒変して悪臭を放つようになったものをいう。古くからの用語。起炎菌としては嫌気性菌のクロストリジウムが最も多い。糖分を融解してガスを発生する場合には,ガス壊疽ということがある。腸管の壊死は,放置すれば必ず壊疽に陥る。虫垂炎も放置すれば壊疽性となる。壊疽に陥りやすいのはほかに,肺,子宮,手足の指など,外界と連絡のあるものに限られる。本来の壊疽は腐敗・融解を起こす湿性の病変であるが,血管閉塞によって足指が壊死に陥り,感染を受けることなく,その部位が乾燥して黒色になることがある。これは乾性の壊疽ではなく,ミイラ化である。これにも,感染が加われば,湿性の真の壊疽になる。
執筆者:山口 和克
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壊死(えし)に陥った組織に、腐敗菌の感染や乾燥などによる二次的変化がおきた場合をいう。壊死組織が腐敗菌の感染を受けると緑黒色を呈し、汚くなり、悪臭を放つようになる。これを湿性壊疽とよぶ。炎症の病巣にも腐敗菌の感染がおこることがあり、この場合はタンパク質の腐敗により硫化水素H2Sが遊離されるので病巣は崩れ、汚く、非常に臭い状態となり、壊疽性炎といわれる。この病状の代表としては肺壊疽があげられる。肺壊疽は肺炎、肺癌(がん)、気管支拡張症などに引き続いておこり、紡錘状菌、スピロヘータなどの混合感染によることが多く、悪臭の強い喀痰(かくたん)は放置すると数層に分かれる。最近、肺壊疽は、臨床的には肺膿瘍(のうよう)と一括して肺化膿症とよばれている。また、壊疽の特殊なものとしてガス壊疽がある。深い刺創、裂創、複雑骨折などの外傷にウェルチ菌が感染しておこる嫌気性細菌性筋炎のことで、筋肉の壊死、局所の捻髪(ねんぱつ)音、酸性臭などを特徴としている。湿性壊疽に対して乾性壊疽もあるが、これは壊死組織が乾燥した状態のもので、ミイラ化ともよばれている。
[渡辺 裕]
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