ガードナー(読み)がーどなー(英語表記)Alexander Gardner

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ガードナー」の意味・わかりやすい解説

ガードナー(Erle Stanley Gardner)
がーどなー
Erle Stanley Gardner
(1889―1970)

アメリカの推理作家。7月17日マサチューセッツ州に生まれる。A・A・フェアA. A. Fairの名も使用した。1911年に弁護士の資格を取得して翌々年開業したが、その実務のかたわらパルプ・マガジンを中心に多作な執筆活動に入り、1933年に出版した最初の著書『ビロードの爪(つめ)』に弁護士探偵ペリー・メースンPerry Masonを登場させて決定的名声を博し、翌年には作家専業となった。肩の凝らない娯楽推理小説の大量生産作家としてあまりにも著名で、発表した約130冊の作品は三十数か国語に訳され、アメリカ国内だけでも発行部数はすでに2億冊を超え、いまなお売れ続けている。前出『ビロードの爪』の原題はThe Case of Velvet Clawsであるが、このようにThe Case of ……で始まる作品だけでも85編を数える。書き始めがD・ハメットなどと同じパルプ・マガジンであったため、材料や文体はハードボイルド調であるが、法律家の知識を存分に生かして、探偵が合法・非合法すれすれの線で事を巧みに処理したり、法廷場面を多用して合理的解決を与えたりする点で、状況を描写するだけのことが多いハードボイルド作品とは違った、推理小説の新しい領域を開拓した。

 メースンもののほかに、地方検事を主人公にしたD・Sもの、A・A・フェア名で書いた探偵コンビのバーサ・クールとドナルド・ラムもの、そのほか短編、ノンフィクションの裁判もの、趣味の自然科学や考古学関係の著述などをあわせると、一説に900編といわれる膨大な執筆量を残した。さらに第二次世界大戦後には、冤罪(えんざい)に泣く人に再審の道を開く法廷闘争を組織して活躍したりもした。70年3月11日没。

[梶 龍雄]

『『世界ミステリ全集2 E・S・ガードナー』(1972・早川書房)』『ドロシイ・B・ヒューズ著、吉野美恵子訳『E・S・ガードナー伝――ペリイ・メイスン自身の事件』(1983・早川書房)』


ガードナー(John Gardner)
がーどなー
John Gardner
(1933―1982)

アメリカの小説家。アイオワ大学大学院で古代・中世英文学を修める。以後各地の大学で教壇に立つかたわら創作を続ける。代表作『陽光との対話』(1972)は、1960年代アメリカの社会的、精神的混乱状況を体現する「陽光の男」と、法と秩序を維持しようとする地方警察署長との精神的出会いを中心として、現代の混迷状況における「愛」の可能性と「徒労」を扱ったもの。ほかに牧歌的な趣向を現代に生かした佳作『ニッケル・マウンテン』(1973)および『王のインディアン』(1974)、『十月の光』(1976)がある。また「ベオウルフ」伝説をもとに、現代の混沌(こんとん)状況にも通ずる暴力の世界を、怪獣の視点より描いた『グレンデル』(1971)など、神話や伝説に素材を借りたものも多い。純粋の学術書として評伝『チョーサーの生涯と時代』(1977)がある。また評論『道徳小説論』で、現代アメリカ作家のニヒリズムへの傾斜を批判した。

[牧野有通]


ガードナー(Alexander Gardner)
がーどなー
Alexander Gardner
(1821―1882)

アメリカの写真家。南北戦争で北軍側の記録写真を撮影したことで知られる。イギリススコットランドに生まれる。本来は化学者であったが、湿板写真の技術で名声をはせ、アメリカの写真家マシュー・B・ブラディに招かれ1856年に渡米した。61年に南北戦争が始まると、ブラディ指揮の従軍写真班に参加するが、その後独立し、自らの名を冠した『戦争写真スケッチ集』(1866)を刊行する。この写真集のなかには、62年に撮影されたリンカーン大統領とマックレラン将軍の会見の模様をはじめ、前線で死傷している兵士の写真などが多く収められ、後世、ドキュメンタリー写真の先駆として高く評価されるようになった。戦争後は西部開拓鉄道建設の記録写真や、警察の捜査資料写真を手がけ、いずれも先駆的な業績を残した。

[平木 収]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ガードナー」の意味・わかりやすい解説

ガードナー
Gardner, Ava

[生]1922.12.24. アメリカ合衆国ノースカロライナ,グラブタウン
[没]1990.1.25. イギリス,ロンドン
アメリカ合衆国の映画女優。フルネーム Ava Lavinia Gardner。貧しいタバコ農家に生まれて男まさりに育ったが,18歳のときニューヨークで義兄が経営する写真館に展示されていたポートレートメトロ=ゴールドウィン=メイヤー MGMのスカウトの目に留まった。『殺人者』The Killers(1946)でバート・ランカスターの相手役を務め,男を誘惑してだます女を好演したのをきっかけに女優として躍進。ジョン・フォード監督作品『モガンボ』Mogambo(1953)ではクラークゲーブルと共演し,アカデミー賞候補になった。私生活では俳優のミッキー・ルーニー,ミュージシャンのアーティ・ショー,さらに歌手・俳優のフランク・シナトラとの波乱に満ちた結婚歴で世間の注目を浴びた。

ガードナー
Gardner, John Champlin, Jr.

[生]1933.7.21. ニューヨーク,バテービア
[没]1982.9.16. ペンシルバニア,サスケハナ
アメリカの小説家。アイオワ大学大学院卒業。ベニントン大学などで英文学を講じる。信仰,倫理の問題に正面から取組み,『復活』 The Resurrection (1966) ,『アガトンの破滅』 The Wreckage of Agathon (70) ,古代英詩『ベーオウルフ』を下敷きにした『グレンデル』 Grendel (71) ,ギリシア神話を巧妙に利用した韻文による小説『イアソンメデイア』 Jason and Medeia (73) ,『ニッケル・マウンテン』 Nickel Mountain: A Pastoral Novel (73) ,『十月の光』 October Light (77) と次々に力作を発表,現代アメリカで最も注目される作家の一人となった。専門の中世英文学の分野でも『チョーサーの生涯とその時代』 The Life and Times of Chaucer (77) などを書いた。

ガードナー
Gardner, Erle Stanley

[生]1889.7.17. マサチューセッツ,モールデン
[没]1970.3.11. カリフォルニア,テメキューラ
アメリカの推理小説作家,弁護士。鉱山技師の家に生れ,各地を転々とし,1911年にカリフォルニア州で弁護士を開業,中国人やメキシコ人ら弱者の弁護にあたる。法廷での経験を生かし,雑誌に推理小説を書きはじめ,「弁護士ペリー・メーソン・シリーズ」の最初の作品『ビロードの爪』 The Case of the Velvet Claws (1933) の成功により作家生活に入る。同シリーズは 80冊に及び,ほかに『これは殺人だ』 The D. A. Calls it Murder (37) など「地方検事ダグ・セルビー・シリーズ」,A. A.フェアの筆名を用いた私立探偵物など,140以上の推理小説を書き,そのうち 100冊以上が文字どおりミリオン・セラーであった。

ガードナー
Gardner, Alexander

[生]1821.10.17. イギリス,ペーズリー
[没]1882. アメリカ合衆国,ワシントンD.C.
アメリカ合衆国の写真家。マシュー・B.ブレーディの招きでイギリスから渡米。ブレーディが南北戦争の撮影隊を組織した際,南軍側の記録を担当。しかし途中,著作権問題でブレーディと争い,独立して撮影隊を組織し,『ガードナーの南北戦争のスケッチブック』Gardner's Photographic Sketch Book of the Civil War(1866)全2巻を刊行した。南北戦争後は,再開された西部開拓に伴う探検調査隊の記録写真家として活躍し,とりわけユニオン・パシフィック鉄道東部線の敷設状況とその周辺地帯を撮った記録は有名。

ガードナー
Gardiner, Alan Henderson

[生]1879.5.29. エルサム
[没]1963.12.19. オックスフォード
イギリスのエジプト学者,言語学者。シナイ文字を解読し,それがエジプトの象形文字セム文字との中間段階であるという説を発表した。一般言語学の分野では,『言語活動と言語の理論』 The Theory of Speech and Language (1932) で speechと languageとを区別し,前者の単位は文であり,後者の単位は語であると説いた。

ガードナー
Gardiner, Stephen

[生]1482頃.ベリセントエドムンズ,スタッフォーク
[没]1555.11.12. ロンドン
イギリスのウィンチェスターの司教,大法官。ケンブリッジのトリニティ・カレッジを卒業後,枢機卿ウルジーの秘書となり,ヘンリー8世の離婚問題で外交的手腕を発揮する。 1531年ウィンチェスターの司教,40年ケンブリッジ大学総長となる。宗教改革に抵抗し,ロンドン塔に幽閉され,司教職から追われたが,メアリー1世の即位とともに大法官となり,新教徒を迫害した。

ガードナー
Gardner, Percy

[生]1846.11.24. ロンドン
[没]1937.7.17. オックスフォード
イギリスの考古学者,特にギリシアの貨幣の研究で有名。ケンブリッジのクライスト・カレッジを卒業後,大英博物館に所属。 1880年にケンブリッジ大学教授となったが,87年以降はオックスフォード大学に移った。主著"The Types of Greek Coins" (1883) 。

ガードナー
Gardiner, Alfred George

[生]1865
[没]1946
イギリスのジャーナリスト,随筆家。 1902~19年,ロンドンの『デーリー・ニューズ』紙の主筆。 Alfa of the Plough (北斗七星の主星) のペンネームで,ユーモアに富んだ随筆を書いた。

ガードナー
Gardiner, Samuel Rawson

[生]1829
[没]1902
イギリスの歴史家。 17世紀の革命史専攻。ロンドン大学教授。主著『イギリス史 1603~42』 History of England1603-42 (1863~82) 。

ガードナー
Gardner

アメリカ合衆国,マサチューセッツ州北部の酪農地帯にある都市。 19世紀の初め,椅子製造工場が建設されて,その後事務用機器や家具の製造業が発達した。現在もこの種の工業が立地。人口2万 125 (1990) 。

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