翻訳|paisley
勾玉(まがたま)形に先端が屈曲した植物文様。元来はイギリスのグラスゴー南西約4kmにある小さな町の名。この町で19世紀初頭より,当時ヨーロッパで人気のあったインドのカシミア・ショールの模倣品が大量に生産されたことから,ペーズリーの名がカシミア・ショールの代名詞となり,さらにカシミア・ショールに最も多いデザインである勾玉形の植物文様をペーズリーと呼ぶようになった。この植物文様の起源は,一般に西アジアに古くからある〈生命の樹〉に由来するとみなされているが,カシミール地方においては糸杉をデザインしたものと考えられている。今日現存するものでは,17世紀以降のインドおよびイランの染織文様に最も多く,カシミア織はもちろん,刺繡,更紗などにも広く活用されている。この文様は初期のものほど,一つの花卉文様としての具象性をそなえているが,時代が下るにつれ,形式化され,勾玉形の枠の中を花文や幾何学文で埋めつくしたものになってゆく。文様相互の構成は布の横幅いっぱいに横や斜めに並べたり,四隅に配したりする。また全面を覆う唐草文様としたものもあり,ペーズリー自体の形も,極度に細長くして,先端をダイナミックに屈曲させて,互いに絡み合わせた複雑なものもある。
執筆者:小笠原 小枝
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
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エキゾチックな勾玉(まがたま)形の模様。小紋風のものから、大柄なものまで大小さまざまあり、模様の内部に数個の小さいペーズリーを入れ、その中にさらに微細なペーズリーを二重、三重に入れ込んだ複雑な形式をとるものもある。これはインドの植物マンゴーmangoの果実の形を便化したものと考えられ、唐草のモチーフにこれを使った古典的なペーズリーのほかに、単独にこれを散らし模様風に表した近代的なペーズリーもある。東洋風なペーズリーが比較的丸形であるのに対し、ヨーロッパ風なペーズリーは細く長い形式をとる。インド北部のカシミール地方でつくられた、手織りのショールに使われたのが起源で、18世紀初頭、イギリス、スコットランドのペーズリー市に移入され、19世紀に大流行した。今日も婦人服地、スカーフ、ネクタイなどの模様として、幅広く愛用されている。
[村元雄]
イギリス、スコットランド南西部の工業都市。グラスゴーの西11キロメートルにあり、クライド川支流ホワイト・カート川が貫流する。人口7万0900(2002推計)。グラスゴー工業地帯の都市機能を分担し、繊維、造船、機械、化学、自動車工業などが発達している。19世紀に世界的ブームを巻き起こしたショールやスカーフなどのペーズリー製品はここで大規模に生産されていたが、安価な類似品の出現やショールの衰退により現在はほとんどみられなくなった。
[米田 巌]
出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報
…カシミア・ショールの名で世界に名高く,もともと王侯貴族の衣料,ショールとして用いられていた。文様はほとんどがインド松,あるいはペーズリーと呼ばれるアーモンド形の花文様,またペーズリーを唐草風にアレンジしたものを主としている。カシミア織には,文様を織りだした〈織(おり)カシミア〉と,ししゅうした〈繡(ぬい)カシミア〉とがある。…
※「ペーズリー」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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