改訂新版 世界大百科事典 「キクスイカミキリ」の意味・わかりやすい解説
キクスイカミキリ
Phytoecia rufiventris
甲虫目カミキリムシ科に属し,キクの害虫として知られる。日本全土のほか,朝鮮半島,中国東北部,シベリア東部,台湾などに分布する。体は黒色で同色の毛で覆われる。胸部背面に赤色紋がある。体長6~9mm。成虫は4月ごろから出現し,ヨモギ,キク類の若い茎を15mm内外,縦長に食べる。産卵は5月下旬から6月下旬にかけて行う。キクの茎の先端から10cmくらい下方に環状のかみ傷を約1cm間隔で2本つけ,さらにその中間に点状の小さいかみ傷をつけて,この傷の中に1個の卵を産みつける。茎は環状のかみ傷の上部がしおれ,やがてこの部分が枯れる。卵は約10日後に孵化(ふか),幼虫はしおれた茎の中に潜り込んだ後,根のほうへ孔道をあけて食べ進む。幼虫は黄色円筒形で胸脚を欠く。8月下旬ごろには根の中で蛹化(ようか),9月中旬から10月上旬に羽化するが,そのまま根の中で越冬し翌春になって出現する。
執筆者:林 長閑
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報