キサントン(読み)きさんとん(英語表記)xanthone

日本大百科全書(ニッポニカ) 「キサントン」の意味・わかりやすい解説

キサントン
きさんとん
xanthone

環内に酸素原子を含む複素環式化合物の一つ。ジベンゾ-γ(ガンマ)-ピロンともいう。

 この化合物自体は天然に存在しないが、誘導体はある種の植物(たとえばリンドウ科スウェルチアマリンウルシ科のマンギフェリンなど)中に存在する。サリチル酸フェニルを280℃に加熱して環化させるとフェノールとともに得られる。無色の針状結晶。水には溶けないが、ベンゼンなどの有機溶媒には溶ける。硫酸に溶かすと黄色の溶液になり、青色蛍光を発する。キサントン誘導体の天然色素としてはオイキサントンやゲンチシンなどがあり、前者は黄色染料ピウリの主成分として知られている。

[廣田 穰]


キサントン(データノート)
きさんとんでーたのーと

キサントン

 分子式 C13H8O2
 分子量 196.2
 融点  174℃
 沸点  350℃/730mmHg

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

改訂新版 世界大百科事典 「キサントン」の意味・わかりやすい解説

キサントン
xanthone



ジベンゾ-γ-ピロンに相当し,9-キサンテノンともいう。白色針状晶で融点174℃,沸点350℃(730mmHg)。水に不溶だが,ベンゼン,クロロホルムなどにはよく溶ける。キサントン自身は天然には存在しないが,ゲンチシンなどリンドウ科の植物にオキシ誘導体として,またマンゴー果実などにヒドロキシ誘導体として含まれる。濃硫酸を加えると淡青色の蛍光を発する黄色溶液となる。サリチル酸フェニルを加熱,またはサリチル酸と無水酢酸の縮合によって合成される。


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化学辞典 第2版 「キサントン」の解説

キサントン
キサントン
xanthone

9-xanthenone,dibenzo-γ-pyrone.C13H8O2(196.20).天然には,ヒドロキシ誘導体の形でリンドウ科,オトギリソウ科,ウルシ科,そのほかの草花中に存在する.合成するには,サリチル酸フェニルを加熱すれば脱水閉環してキサントンが得られる.融点173~174 ℃ の結晶で,クロロホルムやベンゼンに可溶.水蒸気蒸留されやすく,亜鉛末と蒸留すればキサンテンになる.[CAS 90-47-1]

出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報

世界大百科事典(旧版)内のキサントンの言及

【ハナイカリ(花碇)】より

…日本全土の日当りのよい草地に生育し,サハリン,千島列島,シベリア,カムチャツカ,中国からヨーロッパの東端まで広く分布する。植物体には,ゲンチアニンgentianineのほかにキサントンxanthone類(1‐ヒドロキシ‐2,3,4,5‐テトラメトキシキサントンほか)を含み,漢方では解熱・解毒剤とする。【豊国 秀夫】。…

【ハナイカリ(花碇)】より

…日本全土の日当りのよい草地に生育し,サハリン,千島列島,シベリア,カムチャツカ,中国からヨーロッパの東端まで広く分布する。植物体には,ゲンチアニンgentianineのほかにキサントンxanthone類(1‐ヒドロキシ‐2,3,4,5‐テトラメトキシキサントンほか)を含み,漢方では解熱・解毒剤とする。【豊国 秀夫】。…

【ピロン】より

…γ‐ピロンは,水,エチルアルコールに溶けやすい吸湿性結晶で,融点32℃,沸点119℃(35mmHg)。ベンゾ‐γ‐ピロンをクロモン,ジベンゾ‐γ‐ピロンをキサントンといい,いずれも重要な黄色植物色素の基体である。ピロン環には弱い芳香族性があり,アンモニアと反応してピリドンとなる。…

※「キサントン」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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