日本大百科全書(ニッポニカ) 「キタリス」の意味・わかりやすい解説
キタリス
きたりす / 北栗鼠
red squirrel
[学] Sciurus vulgaris
哺乳(ほにゅう)綱齧歯(げっし)目リス科の動物。この科ではヨーロッパでもっとも普通にみられる種である。北海道を含むアジア北部およびヨーロッパの、おもに針葉樹林にすむが、このうち北海道に分布する亜種はエゾリスS. v. orientalsとよばれる。体長20~25センチメートル、尾長17~20センチメートル、体重250~480グラム。樹上生で、鋭い鉤(かぎ)づめと尾を使って敏捷(びんしょう)に樹上を動き回る。地上でも巧みに行動できるが、長くとどまることはない。子を連れた雌親以外は普通単独で行動し、高木の枝のまたや洞穴にコケ、小枝、葉などでつくった丸い巣にすむ。昼行性で、食物は木の実、芽、果実、キノコ、昆虫などが多く、水もよく飲む。食物の豊富な季節にはマツの実やどんぐりを集め、地面に掘った小さな穴に埋めて隠す。冬、それらの貯蔵物を、においで探し出して利用する。秋に食物が極度に不足すると、ときに集団で大移動することがある。冬眠はしないが、悪天候が続くと数日間、巣内にとどまる。繁殖はおもに春であるが、夏、ときには冬にも行われ、1産3~8子。天敵は猛禽(もうきん)類とテンである。毛皮は柔らかく良質で、襟巻などに利用される。
[今泉吉晴]