日本大百科全書(ニッポニカ) 「キャザー」の意味・わかりやすい解説
キャザー
きゃざー
Willa Sibert Cather
(1873―1947)
アメリカの女流小説家。バージニア州生まれ。幼いころネブラスカ州に移り、移民や開拓者の社会で育ち、その体験に基づいて多くの作品を書き、地方主義作家の一人に数えられる。ネブラスカ大学卒業後、新聞・雑誌の仕事や教員をするかたわら創作を始めた。ニューヨークで文芸雑誌『マックルア』の編集に関係(1906~12)しながら、長編『アレグザンダーの橋』(1912)を出版。やがて、ともに中西部の大草原を舞台に、たくましく生きる開拓者の女性を主人公とした『おお開拓者よ!』(1913)と『私のアントニーア』(1918)を発表。『われらの仲間』(1922)ではピュリッツァー賞を受けた。ほかの主要作品に『迷える夫人』(1923)、『死を迎える大司教』(1927)、『岩の上の影』(1931)などがある。キャザーの小説は、運命と自然に対し、果敢に闘う人間の姿を美しい文体で表現し、アメリカ文学史上独自の地位を保っている。
[小林恵昭]
『小林健治訳『おお開拓者よ!』(『現代アメリカ文学全集2』所収・1957・荒地出版社)』▽『石井桃子編『20世紀英米文学案内12 キャザー』(1967・研究社出版)』