改訂新版 世界大百科事典 「キランソウ」の意味・わかりやすい解説
キランソウ
Ajuga decumbens Thunb.
山野の道端に生えるシソ科の多年草。地面にへばりついて生育するので,ジゴクノカマノフタの名もある。根出葉はロゼット状となって数枚あり,長さ4~6cm,幅1~2cm,長楕円形で波状の鋸歯があり,先は鈍頭。茎は四方に広がって地をはい,長さ5~15cm,多細胞のちぢれた毛があり,数対の葉をつけて,多くは紫色を帯びる。3~5月頃,葉腋(ようえき)に数個ずつ花をつける。花は紫色で長さ約8mmの筒があり,上側は小さく2裂してごく短く,下側は3裂して開出し,中央裂片は最も大きく,濃色の条がある。本州,四国,九州,朝鮮,中国に分布する。咳止め作用を有し,漢方薬として利用される。
キランソウ属Ajugaには約50種があり,旧世界の温帯から暖帯および熱帯の高山に分布する。日本にはキランソウの他にジュウニヒトエ,カイジンドウ,ニシキゴロモ,ツルカコソウ,ヒメキランソウ,オウギカズラ,タチキランソウなど約10種がある。また花のきれいな種は,ロックガーデンや花壇に栽植される。
執筆者:村田 源
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報