改訂新版 世界大百科事典 「ジュウニヒトエ」の意味・わかりやすい解説
ジュウニヒトエ
Ajuga nipponensis Makino
やや乾いた丘陵地の落葉樹林内や道端に生えるシソ科の多年草。和名は草の姿を昔の女官の十二ひとえに見立てたものである。高さ10~25cm,全体に多細胞の白いちぢれ毛に密に覆われている。葉は対生し,長楕円状さじ形で縁に少数の波状鋸歯があり,茎に2~3対つく。茎の基部にある2~3対は鱗片状となっている。花は4~6月ころ,茎の先端に花穂を作って多数が互いに接近してつき,淡藍紫色,まれに白色のものもある。萼は合生し,先が5裂して毛がある。花冠は背面で長さ約9mm,唇形で,上唇は短くて2裂し,下唇は大きく開出して3裂し,筒部とほぼ同長である。山草として鉢植えにし,観賞されることがある。本州,四国に分布する日本特産種の一つである。
最近,花壇の植えこみなどによく用いられて,春に紫青色の花を総状に多数つける植物はしばしばジュウニヒトエと誤称されているが,ジュウニヒトエと同属でヨーロッパ原産のセイヨウキランソウA.reptans L.である。匍匐(ほふく)枝を伸ばして,地面を広く覆うので,緑被植物として好適である。
執筆者:村田 源
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報