日本大百科全書(ニッポニカ) 「キリマンジャロ火山」の意味・わかりやすい解説
キリマンジャロ火山
きりまんじゃろかざん
Kilimanjaro
アフリカ大地溝帯に沿い、ビクトリア湖東方のケニア国境に近いタンザニア領にある火山。標高5895メートル、アフリカ大陸の最高峰である。山名はスワヒリ語で「輝ける山」の意。赤道付近にありながら、頂部は万年雪に覆われ、「白い山」(マサイ語)ともよばれる。アルカリ岩系の粗面岩、粗面玄武岩などからなり、主峰キボをはじめ、シラ、マウェンジの三つの壮大な成層・円錐(えんすい)火山をもち、基底の直径50~80キロメートル、比高5000メートル余の大規模な火山である。北西部にあるシラはもっとも古く、侵食が著しい。南東部を占めるマウェンジは山頂部に大カルデラがある。中央にあるキボはもっとも新しく、その噴出物がシラの大部分とマウェンジの一部を覆っている。キボ山頂にある地形的に新しい火口(直径900メートル、深さ46メートル)内には火孔(直径340メートル、深さ130メートル)がある。また、山腹には放射状に寄生火山が分布する。現在も硫気活動は所々でみられるが、噴火の記録はない。標高1000メートル以下の山麓(さんろく)は不毛であるが、南西側の1000~2000メートル地帯では、原住民がコーヒーやバナナなどを栽培する。1889年にドイツ人のマイヤーH. Meyerらが初登頂し、日本からも1958年(昭和33)早稲田(わせだ)大学赤道アフリカ遠征隊が初登山した。避難小屋なども整備され、登頂はあまりむずかしくない。この火山は、アメリカの作家ヘミングウェイの『キリマンジャロの雪』(1936)で世界的に著名になった。
[諏訪 彰]
『早稲田大学赤道アフリカ遠征隊編『アフリカ横断1万キロ』(1958・朝日新聞社)』▽『早稲田大学赤道アフリカ遠征隊編『赤道のアフリカ――横断記録写真集』(1958・朝日新聞社)』