日本大百科全書(ニッポニカ) 「キレナイカ」の意味・わかりやすい解説
キレナイカ
きれないか
Cyrenaica
北アフリカ、リビアの東部地方3県を総称する地域。面積約85万平方キロメートル。地理的には、ジャバル・アフダル(緑の山)とよばれる地中海沿岸の高地地方、シルテ湾岸の低地地方、内陸の南部地方の3地域に分けられる。キレナイカの先住民はベルベル人であるが、紀元前7世紀にギリシア人が現在のベンガジほかの植民市を建設し、前1世紀にローマの支配下に入った。紀元後641年アラブ人が征服し、住民のアラブ化、イスラム化が進んだが、エジプトとトリポリタニアの対抗勢力の影響下にあって、オスマン帝国期も含めてキレナイカには安定した自立政権ができなかった。しかしサヌーシー教団の本拠地であり、1912年のイタリア侵攻への抵抗運動のなかで、後の国王ムハンマド・イドリースが政権を掌握する根拠地となった。1951年の独立後、トリポリタニア、フェザンとともにリビア連合王国を構成する3州の一つとなったが、63年の連邦制廃止とともに三つの県(ベンガジ、ジャバル・アフダル、デルナ)に分けられた。ジャバル・アフダルを除けば雨量が乏しいために粗放な農耕と牧畜に依存しており、石油資金を投じて都市や道路の建設が行われたものの、トリポリタニアに比べて開発が立ち後れている。面積では国土の半分を占めるが、人口は4分の1強を占めるにすぎない。ベンガジ、デルナ、ベイダなどの都市がある。
[宮治一雄]