改訂新版 世界大百科事典 「ギンヤンマ」の意味・わかりやすい解説
ギンヤンマ
Anax parthenope julius
トンボ目ヤンマ科の昆虫。大型で体長約70mm。緑色の胸部にオリーブ色,または褐色の腹部をもつよく知られた普通種であるが,北海道ではまれ。日本全国から中国に見られるが,東南アジアではきわめてまれとなり,インド以西では乾燥地型の別亜種となりヨーロッパまで達する。渡洋移動性があり,北海道では定着しているかどうか不明である。幼虫は低地の池沼で育ち,5~9月ころを通じて羽化するが,盛夏にもっとも多い。未熟の成虫は昼間空地の上空1~2mの高さを摂食飛翔(ひしよう)するが,老熟虫は池沼にきて雌を求める。連結したもの,または単独の雌が水面に浮かぶ植物体に産卵する。日本ではほかに同属の種が3種あり,クロスジギンヤンマは胸側に黒い筋を有し春期いっせいに出現する。オオギンヤンマは東南アジアの種で渡洋性があり,九州,四国の南部に現れることが多いが,ときに関東地方まで飛来する。リュウキュウギンヤンマは琉球諸島以南の種である。
執筆者:朝比奈 正二郎
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報