日本大百科全書(ニッポニカ) 「クズリ」の意味・わかりやすい解説
クズリ
くずり
wolverine
glutton
[学] Gulo gulo
哺乳(ほにゅう)綱食肉目イタチ科の動物。北ヨーロッパからシベリアとアラスカ、カナダの針葉樹林にすむ。体長60~85センチメートル、尾長17~26センチメートル、イタチ科としては大形の種である。全体に黒褐色であるが、肩からわき腹、腰に淡褐色の帯がある。ずんぐりした体つきであるが、四肢は太く、クマのような感じである。普通、単独で生活し、広い縄張りをもつ。木登りは巧みであるが、普段は地上性で、人間とオオカミ以外の動物ならなんでも襲うといわれ、死体も食べるほか、果実も食べる。交尾期は不明であるが、出産は2~5月、2~5子を産む。子は約2年間雌親といっしょに暮らすが、その後は縄張りから追い出される。多くの動物を殺し、残った肉を隠す習性があるため、大食漢(グルトン)ともよばれ、牧畜民から嫌われてきたし、その凶暴さを示す伝説も多い。しかし、飼育下ではむしろ非常に慎重な動物である。毛皮は良質でないが、雪がつきにくく、帽子に使われる。「クズリ」はギリヤーク語からの転訛(てんか)で、中国語(漢字)は熊貂、狼と書き、屈狸は誤りである。
[朝日 稔]