タイガ(読み)たいが(英語表記)Тайга/Tayga ロシア語

デジタル大辞泉 「タイガ」の意味・読み・例文・類語

タイガ(〈ロシア〉tayga/〈英〉taiga)

北半球の冷帯に広がる針葉樹林帯。エゾマツトドマツなどが大部分。狭義にはシベリアのものをさす。

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精選版 日本国語大辞典 「タイガ」の意味・読み・例文・類語

タイガ

  1. 〘 名詞 〙 ( [ロシア語] tajga ) 北ヨーロッパ、シベリア、北アメリカ亜寒帯北部にある、エゾマツ、トドマツなどの針葉樹林帯。狭義にはシベリアのものをさす。
    1. [初出の実例]「タイガは原始的な杜である」(出典:ロシアに入る(1924)〈荒畑寒村〉西比利の汽車旅行)

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「タイガ」の意味・わかりやすい解説

タイガ
たいが
Тайга/Tayga ロシア語
taiga 英語

もともとはロシア語で、シベリアに発達する広大な針葉樹林をさすことばであった。しかし現在では北半球の亜寒帯に分布する針葉樹林全体について用いられている。タイガはきわめて単純な森林で、おもにトウヒ属モミ属マツ属の常緑針葉樹からなり、単一の樹種からなることも多い。林内は暗く、林床にはコケモモなどの矮(わい)低木とコケ類が生育する。ただ、東シベリアの一部にはダフリアカラマツからなる落葉性のタイガがあり、山火事跡や湿地にはカバノキ属、ヤナギ属、ポプラ属などの広葉林からなる森林が現れる。

 タイガの分布域は北緯50~70度の亜寒帯で、北極を取り囲むように分布する。北海道のエゾマツやトドマツの林はその最南部を占めるものとみなされている。南半球には分布しない。タイガの北限は森林限界で、南は温帯林またはステップに移行する。気候的には著しく年較差の大きい気温によって特徴づけられ、夏季には平均10℃を超えるが、冬季には零下数十℃まで下がる所が珍しくない。年降水量は少なく、400~500ミリメートル以下の所が多い。しかし雨は夏に集中するうえ、地下に永久凍土層があって、水の浸透を防いでいるため、砂漠にはならない。地面はむしろ湿りぎみで、土壌は強酸性のポドゾル(灰白土)となっており、泥炭地も多い。

 タイガにはテン、キツネなどの毛皮獣が多く、開発はまずこうした毛皮獣を集めることから始まった。毛皮商人の進出がロシアの領土拡大につながったことはよく知られている。1990年代以降、シベリアでは森林の伐採が盛んになり、木材は大半が日本などへの輸出に回されている。しかし伐採によって地下の永久凍土が融け、その中に含まれていた大量のメタンガスが放出されることが明らかになり、地球温暖化を加速させるのではないかと危惧されている。なお、一部では夏の高温を利用して農業も行われるようになってきている。

[小泉武栄]

『斎藤晨二著『ツンドラとタイガの世界』(1985・地人書房)』『加藤九祚著『西域・シベリア タイガと草原の世界』(中公文庫)』『福田正己著『極北シベリア』(岩波新書)』

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改訂新版 世界大百科事典 「タイガ」の意味・わかりやすい解説

タイガ
taiga

山地の針葉樹林帯をさすロシア語。転じてシベリアおよびロシア平原北部を占める広大な亜寒帯林をいう。北はツンドラ帯に接し,南限は,ロシアではサンクト・ペテルブルグ,ニジニ・ノブゴロド(旧名ゴーリキー),ペルミを結ぶ線の北方に,ウラル以東ではほぼシベリア鉄道沿いにその北側にある。現在は山地の針葉樹林を山地タイガと呼び分け,その南限はアルタイ山脈西部やサヤン山脈,シホテ・アリン山脈,北海道などで上記の線から南に突出している。また広義には,西ヨーロッパや北アメリカで北方松柏林boreal coniferous forestまたは単に北方林と呼ぶ,スカンジナビアカナダアラスカなどの亜寒帯林や,アルプス,ヒマラヤその他高山の針葉樹林も,タイガ,山地タイガに含まれる。タイガは地球上最大の森林地帯で,全森林面積の1/3以上に及び,そのうちユーラシア大陸が55%,北アメリカ大陸が40%を占める。南半球は全部で5%に満たず,ほとんどが山地タイガである。タイガの約2/3は永久凍土帯にあり,その南でも冬は長く寒く積雪や土壌の凍結をみるが,夏が短いながらも気温上昇の著しい(平均気温10~20℃の月が1~4ヵ月)大陸性気候で,湿潤度も高い。とくに凍土帯では地表がとけて沼沢状となり,沼沢タイガムスケーグ(カナダ)などと呼ばれる。主要構成樹種はマツ,トウヒ,モミ,ツガ,ネズ,カラマツなどの針葉樹と,カバノキ,ヤナギ,ハコヤナギその他の落葉広葉樹で,針葉樹林の極相,すなわち黒タイガでは近縁種の純林が多く,製材・パルプ工業の立地に好都合である。また毛皮獣の狩猟もさかんである。一方,南縁付近をはじめとして,二次林らしい広葉樹の比率の高い混合林もあり,白タイガとよばれている。
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百科事典マイペディア 「タイガ」の意味・わかりやすい解説

タイガ

シベリアおよびロシア北部の,ツンドラ地帯の南に広がる亜寒帯林の総称。広義にはカナダ,スカンジナビア,ヒマラヤの高山の針葉樹林も含まれる。樹種は針葉樹と落葉広葉樹。世界最大の森林地帯を形成。この下の土壌はポドゾル
→関連項目カナダグレート・ベア[湖]原生林サハリンシベリアプトラナ高原ロシア

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「タイガ」の意味・わかりやすい解説

タイガ
taiga

もともとはシベリアのツンドラ地帯の南ウラルからオホーツク海にわたる森林地帯の固有名詞であったが,一般にユーラシア大陸と北アメリカの亜寒帯地域に広がる大森林帯をいうようになった。樹種としては,シベリアトウヒ,カナダトウヒ,シベリアモミ,チョウセンモミ,バルサムモミなどの針葉樹が優占し,同一樹種の極相林をなしているので,林業には好都合である。これらはパルプ原料,建築材,家具材,船材などに使用されている。

タイガ
Taiga

ロシア中部,西シベリア南部,ケメロボ州の都市。州都ケメロボの北北西約 80kmにある。シベリア横断鉄道の建設時につくられた町で,同鉄道の幹線が通り,トムスク方面への支線がここから分れる。鉄道関連企業が立地するほか,食品工業,建設資材工業がある。人口約2万 5000。

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世界大百科事典(旧版)内のタイガの言及

【シベリア】より

…その南に森林ツンドラとさらに針葉樹の森林帯が続く。これはタイガと呼ばれ,西シベリア低地の3分の2を占める。エゾマツ,ハリモミ,アカハリモミ,カラマツ,シベリアマツなどが密生し,南端部にはシラカバやヤナギ類がある。…

【住居】より

…特異な平面形をもつものとして,ポカラ周辺のグルン族の楕円形平面の住居がある。【藤井 明】
【シベリア,中央アジア】
 シベリアの自然環境を植物相から眺めると,北から南へツンドラ(永久凍土地帯),森林ツンドラ,タイガ(針葉樹林地帯),森林ステップ,ステップ(草原)地帯に大別される。そしてその南には,モンゴルや中央アジアの乾燥・半乾燥地帯がある。…

【ロシア】より

…(2)針葉樹林帯 ツンドラとボルガの上・中流に挟まれた北部ロシア全体からなり,含塩灰白土層におおわれている。モミ,ドイツトウヒ,カラマツが主体で,シベリアにかけて広がるうっそうとした森林は〈タイガtaiga〉と呼ばれる。南寄りのごく一部でわずかに穀物が栽培される。…

※「タイガ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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