クペールス(その他表記)Louis Marie Anne Couperus

改訂新版 世界大百科事典 「クペールス」の意味・わかりやすい解説

クペールス
Louis Marie Anne Couperus
生没年:1863-1923

オランダの小説家。ハーグに生まれる。父が当時のオランダ領東インドに司法官として在職したため少年期の数年をジャワ島で過ごし,帰国後ハーグの高等学校に学ぶ。はじめ詩を書いたが,やがて散文に専念し,出世作《エリネ・フェーレ》(1889)をはじめ次々に大作を発表し,繊細な自然主義的心理描写を特徴とする国際的作家として,没年に至るまで旺盛な執筆活動を続けた。一女性の生涯をテーマとした前述の《エリネ・フェーレ》に続く《小人物たちの書》4巻(1901-03),《老人たち》(1906)などの代表作は作者自身の宿命観を基調として,おごりと因襲退廃した当時のハーグの上流階級を描いたもの。また歴史小説にも健筆ふるい,《光の山》3巻(1905-06),《古代旅行》(1911),《ヘラクレス》(1913),《クセルクセス》(1919),《イスカンデル》(1920)その他ギリシア,ローマエジプトなどの古代に取材した多くの作品を執筆した。

 好んで外国に旅行し,一時南フランスやイタリアに住んだこともある。1899年にはオランダ領東インドを訪れ,現地人社会の呪術的現象題材とした《静かな力》(1900)を執筆した。晩年には日本にも来て,日本の説話集《憐れみの糸》(1924)を書いた。またハーグの日刊紙《祖国》その他の新聞,雑誌に紀行文や随筆などを寄稿してジャーナリストとしても活躍した。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「クペールス」の意味・わかりやすい解説

クペールス
くぺーるす
Louis Marie Anne Couperus
(1863―1923)

オランダの小説家。ムルタテューリ以後最大の作家。植民地の上級官吏の子として少年時代の数年間をジャワ島で過ごす。とくに心理小説に優れ、『エリーネ・フェーレ』(1889)、『小人物の書』4巻(1901~03)、『良き時代を懐古する老人たち』(1906)など、上流階級の黄昏(たそがれ)を描いた「ハーグ小説」の名作を発表。東インドの影響も顕著な『秘める力』(1900)もある。結婚後南フランスやイタリアに住み、地中海を舞台に退廃とペシミズムの色濃い一連の歴史小説『イスカンデル』(1920)などを書いた。

[近藤紀子]

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世界大百科事典(旧版)内のクペールスの言及

【オランダ文学】より

…のちに社会主義に転じたホルテルの象徴詩《5月》(1889)は,この個人主義的革新運動の記念碑的作品である。〈80年代派〉とほぼ同時期に活躍した作家にクペールスハイエルマンスがある。クペールスは自然主義的心理描写を特色とする小説を書き,ハイエルマンスは《天佑丸》(1900)など社会問題をテーマとした写実主義の戯曲を発表して,ともに国際的名声を得た。…

※「クペールス」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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