クラカケアザラシ(その他表記)Phoca fasciata; ribbon seal

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「クラカケアザラシ」の意味・わかりやすい解説

クラカケアザラシ
Phoca fasciata; ribbon seal

食肉目鰭脚亜目アザラシ科ゴマフアザラシ属。体長約 1.8m,体重 90~148kgに達する。出生体長は約 86cm,出生体重は約 10.5kgである。体毛の色は雌雄で異なり,雄は暗い灰色を帯びた青紫色または赤紫色で,頸部に幅広い首輪状の白帯があるほか,両肩から前肢のまわりを取囲む白帯があり,これらは肛門付近で合一し上方に向う。種名はこれらの白色帯によって濃色部分が鞍 (くら) 状にみえることに由来する。雌は一様に濃いベージュ色か濃い茶ねずみ色で体の後部に鮮明な乳白色の帯を有することがある。体型は太い紡錘形で,頭は小さく額が狭い。鼻孔は小さく吻端にありV字状である。吻は狭く中央がへこむ。耳介はなく,耳孔は眼の後方やや下側に位置し比較的大きい。前肢は短く指間に蹼 (みずかき) があり,後肢は鰭 (ひれ) 状で,四肢は毛が密生する。尾は短い。門歯は上顎6本,下顎4本,犬歯は上顎と下顎に2本ずつ,頬歯は上顎と下顎に各 10本である。氷上単独生活し,ヘビのように体をくねらせてすばやく動くことができる。4月上旬から5月上旬に流氷の上で出産する。食性場所季節によって変化し,北方系魚類や甲殻類を捕食する。オホーツク海黄海日本海およびベーリング海に広く分布する。冬から初夏にかけては氷縁の南側に,晩夏から秋にかけては河口付近を含む沿岸に生息する。

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改訂新版 世界大百科事典 「クラカケアザラシ」の意味・わかりやすい解説

クラカケアザラシ
ribbon seal
Phoca fasciata

鰭脚(ききやく)目アザラシ科の哺乳類。眼が大きい沖合性のアザラシで,陸岸ではめったに見られない。名は成獣の雄の体側,腰部に見られる黒地に白色バンドのくらをかけたような鮮やかな体色模様による。幼獣,雌には雄のような模様は発達しない。雄の模様は二次性徴的なため,繁殖生態と関係すると思われている。体長は1.6m前後,体重は雄は90kg以上,雌は80kgほどになる。オホーツク海,ベーリング海のみに分布し,海氷期には海氷にのっているが,海氷が溶けた後はずっと沖合で水中生活をする。眼が大きく,気管支付近から胸気囊が発達していることから深潜水能力をもつと思われる。海氷上では一つのパックアイスに必ず単独でおり群れをつくらない。繁殖期以外は雌雄別々に分布すると考えられている。産業的利用価値は少なく捕獲はあまりされなかった。
アザラシ
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「クラカケアザラシ」の意味・わかりやすい解説

クラカケアザラシ
くらかけあざらし / 鞍掛海豹
ribbon seal
[学] Phoca fasciata

哺乳(ほにゅう)綱鰭脚(ききゃく)目アザラシ科の海産動物。別名リボンアザラシ。ベーリング海、オホーツク海にだけ生息し、北海道北東部には流氷に乗って姿をみせる。体長は約1.8メートル。体色は濃茶灰色。雄には幅広い白色帯が頭からのど、前肢の周り、腰部にあり、白色帯で囲まれた背部が鞍状にみえる。雌には白色帯はない。流氷上や人里離れた島で生活し、前肢先端を曲げ、半立ちの姿勢で活発に動き回る。神経質で警戒心が強く、飼育はむずかしい。

[鳥羽山照夫]


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小学館の図鑑NEO[新版]動物 「クラカケアザラシ」の解説

クラカケアザラシ
学名:Histriophoca fasciata

種名 / クラカケアザラシ
科名 / アザラシ科
日本にいる動物 / ◎
解説 / 単独ですごし、氷がとけたあとも外洋にとどまり、岸に近づきません。
体長 / 1.1~1.5m、最大1.8m
体重 / 50~70kg、最大148kg
食物 / 魚、甲殻類
分布 / オホーツク海、ベーリング海

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世界大百科事典(旧版)内のクラカケアザラシの言及

【アザラシ(海豹)】より

…南半球では種分化を促す陸地の障壁が北半球ほど複雑でないため種類が少ない。北半球では,北太平洋にクラカケアザラシ(イラスト),アゴヒゲアザラシ,ゴマフアザラシ(イラスト)の3種,北大西洋にハイイロアザラシ(イラスト),ズキンアザラシ,タテゴトアザラシ(イラスト)の3種,両方にワモンアザラシ(イラスト),ゼニガタアザラシ(イラスト)の2種が分布する。北半球の低緯度地方にはモンクアザラシ類3種とキタゾウアザラシが分布し,カスピ海やバイカル湖にもワモンアザラシ類2種が分布する。…

※「クラカケアザラシ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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