日本大百科全書(ニッポニカ) 「クラルテ」の意味・わかりやすい解説
クラルテ
くらるて
Clarté
フランスの作家バルビュスの長編小説。1919年刊。第一次世界大戦の従軍体験を描いた『砲火』(1916)の続編。まじめで平凡な勤め人の主人公が、戦場に駆り出されて瀕死(ひんし)の重傷を負い、戦争の不条理に目を開き、階級意識に目覚める。そして、人民を戦争に駆り立てる愛国心の欺瞞(ぎまん)、人民の生活と生命を犠牲にして省みない為政者の虚偽、為政者におもねる宗教界の偽善に激しい怒りを覚え、世界のプロレタリアートは一致団結して搾取階級を打倒し、民衆による自由平等の世界国家を樹立すべきで、この実現こそ人類永遠の真理、クラルテ(光)であると説く。
[稲田三吉]
『田辺貞之助訳『クラルテ』(岩波文庫)』