バルビュス(読み)ばるびゅす(英語表記)Henri Barbus

日本大百科全書(ニッポニカ) 「バルビュス」の意味・わかりやすい解説

バルビュス
ばるびゅす
Henri Barbus
(1873―1935)

フランスの小説家。パリ近郊アスニエルに生まれる。早くからジャーナリズムに身を投じ、詩人として出発。1908年、人間情念の赤裸々な姿を描いた『地獄』で文壇の注目を浴びた。第一次世界大戦開始とともに志願して従軍し、その体験をもとに『砲火』(1916)、その続編クラルテ』(1919)を書き、戦争の悲惨、愚劣さを訴えた。そして戦争の愚を避けるには、為政者手先として使われる敵味方の兵士の反戦的結束以外にないと説いた。その反戦論は戦後いよいよ強まり、32年ドイツでヒトラーが台頭するや、ロマン・ロランと協力してアムステルダムに国際反戦会議を招集し、以後平和運動に尽力した。バルビュスは革命後のロシアを理想の地と考えていたが、4回目のソビエト訪問で急性肺炎をおこし、モスクワで没した。

稲田三吉

『田辺貞之助訳『砲火』(岩波文庫)』

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「バルビュス」の意味・わかりやすい解説

バルビュス
Barbusse, Henri

[生]1873.5.17. セーヌ,アニエール
[没]1935.8.30. モスクワ
フランスの小説家。パリ大学在学中の 1892年『エコ・ド・パリ』紙主催の作詩コンクールで入賞,詩集『嘆きの女たち』 Les Pleureuses (1895) によって憂愁の詩人として出発したが,小説に転じ,ホテルの壁穴から目撃されるさまざまな事件を自然主義的手法によって赤裸々に描き出した『地獄』L'Enfer (1908) によって注目を浴びた。第1次世界大戦に参加,戦争文学の傑作『砲火』 Le Feu (16,ゴンクール賞) を著わし,社会主義的平和主義に向った。さらに,無産階級の立場を擁護した小説『クラルテ』 Clarté (19) を出版,同名の雑誌を創刊し,コミュニスト作家としての地位を確立,反ファシズムの国際作家会議の開催 (35) などに尽力した。ほかに『連鎖』 Les Enchaînements (25) ,『イエス』 Jésus (27) ,『上昇』 Élévation (30) ,『スターリン』 Staline (35) など。

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