クラーグ(読み)くらーぐ

日本大百科全書(ニッポニカ) 「クラーグ」の意味・わかりやすい解説

クラーグ(兄弟)
くらーぐ

兄トーマスThomas P. Krag(1867―1913)、弟ウィルヘルムVilhelm(1871―1933) 兄は散文、弟は韻文で19世紀末に活躍したノルウェーの文学者。ノルウェー南部、クリスティアンサンの出身。兄弟ともに南部の自然と、民衆の伝統的生活を題材にしたが、兄は弟と違って、荒涼とした自然の神秘、そのなかに生活する人間の奥に潜む心理をメランコリックなタッチで描写した。同時代の詩人オプストフェルダーと同傾向にある作家。代表作に『ヨン・グレフ』(1891)、短編集『孤独な人々』(1893)などがある。

 弟は20歳で詩『ファンダンゴ』でセンセーショナルなデビューを飾り、新浪漫(ろうまん)主義の到来を意識させた。この作品はスペイン舞踊というエキゾチックな気分のなかに、時代の不安、エロティシズムペシミズムを混在させ、リアリズムと決別した新しい方向性を示した。代表的詩集に『詩』(1891)、『夜』(1892)、『西ノルウェー歌謡』(1918)などがある。

[山口卓文]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「クラーグ」の意味・わかりやすい解説

クラーグ
Krag, Thomas

[生]1867
[没]1913
ノルウェーの小説家。 V.クラーグの兄。世紀末のデカダンスに染まり,キルケゴールやデンマーク象徴派の影響を受け,ことに女性の描写にすぐれていた。代表作は『アダ・ウィルレ』 Ada Wilde (1898) や自伝的な『フランツ・イェルム』 Frantz Hjelm (1912) 。

クラーグ
Krag, Jens Otto

[生]1914.9.15. ランデルス
[没]1978.6.22. スキベルン
デンマークの政治家社会民主党に属し,第2次世界大戦後労働組合経済評議会議長,1947年から国会議員。商工業相,労相外相を歴任し,62~68年首相。社会民主党委員長。 71年9月首相に再任。 72年 10月ヨーロッパ共同体 EC加盟承認の国民投票後,辞任。

クラーグ
Krag, Vilhelm

[生]1871
[没]1933
ノルウェーの詩人。 T.クラーグの弟。新ロマン主義の『詩集』 Digte (1891) で一躍名をあげ,『南からの歌』 Sange fra syden (94) ,『西部の歌』 Vestlandsviser (97) など多くのメロディアスな詩集で知られる。

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報

今日のキーワード

プラチナキャリア

年齢を問わず、多様なキャリア形成で活躍する働き方。企業には専門人材の育成支援やリスキリング(学び直し)の機会提供、女性活躍推進や従業員と役員の接点拡大などが求められる。人材の確保につながり、従業員を...

プラチナキャリアの用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android