日本大百科全書(ニッポニカ) 「クラーレ」の意味・わかりやすい解説
クラーレ
くらーれ
curare
南アメリカ産のフジウツギ科(APG分類:マチン科)の高木ストリキノス・トキシフェラStrychnos toxifera R.H.Schomb. ex Lindl.などから得た黒褐色の樹脂状のエキスで、アマゾン川やオリノコ川流域に住む先住民が毒矢の先に塗る毒物である。ひょうたんクラーレcalabash-curareの有毒アルカロイド(クラリンなど)を含み、毒性がもっとも強い。現在、医療用に用いられているのは、同地に産するツヅラフジ科の高木コンドデンドロン・トメントズムChondrodendron tomentosum Ruiz et Pav.などの皮部や木部から得た竹筒クラーレtube-curareの有毒アルカロイドの一種ツボクラリンで、骨格筋弛緩(しかん)剤として用いられる。作用部位は神経筋接合部で、筋を麻痺(まひ)させる。外科手術時の全身麻酔において骨格筋を弛緩させ手術を容易にさせるほか、破傷風やストリキニーネ中毒などにみられるけいれんの治療にも用いられる。毒薬に指定されている。
[幸保文治 2021年5月21日]