クロモン(読み)くろもん(その他表記)chromone

日本大百科全書(ニッポニカ) 「クロモン」の意味・わかりやすい解説

クロモン
くろもん
chromone

酸素複素環式化合物の一種。ベンゼン環とピラン環が縮合した構造ケトンであるので、ベンゾ-4-ピロンともいう。香料であるクマリンの異性体である。無色結晶で、エタノールエチルアルコール)、エーテルベンゼンなどの有機溶媒に溶ける。弱い塩基性をもっていて塩酸と反応して塩を生成する。これは陽イオンになるとピロン環が芳香族性をもち安定化するからである。植物色素として知られているフラボンイソフラボンは、いずれもクロモンのフェニル置換誘導体である()。

[廣田 穰]



クロモン(データノート)
くろもんでーたのーと

クロモン

 分子式 C9H6O2
 分子量 146.1
 融点  59℃
 沸点  (昇華

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

改訂新版 世界大百科事典 「クロモン」の意味・わかりやすい解説

クロモン
chromone


ベンゼン環とγ-ピロン環が縮合した構造をもつ化合物。4H-1-ベンゾピラン-4-オン,ベンゾ-γ-ピロン,あるいは単にベンゾピロンともいう。融点59℃(昇華)の無色針状結晶。塩酸や硫酸とオキソニウム塩をつくる。塩酸塩の融点は101~102℃。黄色植物色素の基体であるフラボンフラボノールなどはクロモンの誘導体である。
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化学辞典 第2版 「クロモン」の解説

クロモン
クロモン
chromone

4H-1-benzopyran-4-one.C9H6O2(146.14).3-ブロモクロマノンを塩基で脱臭化水素すると得られる.無色の針状または板状結晶.融点59 ℃.エタノール,エーテル,ベンゼン,クロロホルムに可溶.昇華性があり,水蒸気蒸留ができる.過マンガン酸カリウム,または熱水酸化ナトリウム水溶液によってサリチル酸に分解する.クロモンの誘導体であるフラボンフラボノールイソフラボンフラバノンは黄色植物色素(フラボン族化合物)として天然に広く存在する.[CAS 491-38-3]

出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「クロモン」の意味・わかりやすい解説

クロモン
chromone

針状晶または板状晶。融点 59℃。ベンゼン環とγ-ピロン環が縮合してできる。

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世界大百科事典(旧版)内のクロモンの言及

【ピロン】より

…γ‐ピロンは,水,エチルアルコールに溶けやすい吸湿性結晶で,融点32℃,沸点119℃(35mmHg)。ベンゾ‐γ‐ピロンをクロモン,ジベンゾ‐γ‐ピロンをキサントンといい,いずれも重要な黄色植物色素の基体である。ピロン環には弱い芳香族性があり,アンモニアと反応してピリドンとなる。…

※「クロモン」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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