日本大百科全書(ニッポニカ) 「クロラミン」の意味・わかりやすい解説
クロラミン
くろらみん
chloramine
アンモニアNH3のH(水素)をCl(塩素)で置換した一連の化合物をいう。上水道の消毒法の一つにアンモニア塩素法があり、アンモニアと塩素を1対3の割合で同時に水中へ注入すると、クロラミン(NH2Cl、NHCl2)を生じ、徐々に次亜塩素酸HClOを遊離して殺菌作用を現す。殺菌力は弱いが水中の残留効果が認められ、クロラミン法ともよばれる。コストが高くつくことから日本では行われていない。塩素による飲料水の消毒の場合も、生成したクロラミンによる結合型有効塩素が残留効果を示している。この場合、水素イオン濃度(pH)の値に左右される。
医薬用のクロラミンはクロラミンT(トシルクロルアミドナトリウムCH3C6H4SO2NClNa・3H2O)のことで、トシルとはp(パラ)-トルエンスルホニル(C7H7SO2-)をいう。歯科領域では0.5~2%濃度液が根管清掃消毒剤として使われ、一般医薬面では傷口や口腔(こうくう)粘膜のほか、器具や手指および飲料水の消毒に使われたが、現在ではほとんど使用されず、日本薬局方でも削除されている。
[幸保文治]