日本大百科全書(ニッポニカ) 「テレフタル酸」の意味・わかりやすい解説
テレフタル酸
てれふたるさん
terephthalic acid
芳香族ジカルボン酸の一つ。1,4-ベンゼンジカルボン酸ともよばれる。フタル酸(1,2-ベンゼンジカルボン酸)およびイソフタル酸(1,3-ベンゼンジカルボン酸)はテレフタル酸の異性体である。実験室的には、p(パラ)-キシレンを過マンガン酸カリウム、三酸化クロムなどにより酸化すると得られる。以前は、フタル酸または安息香酸のカリウム塩を二酸化炭素と加圧・加熱するヘンケル法(ドイツのヘンケル社Henkel & Cieが開発)により工業的に製造されていたが、今日では、コバルトなどの重金属触媒を用いるp-キシレンの空気酸化により製造されている。常圧では300℃付近で昇華する。白色の結晶で、水、エタノール(エチルアルコール)にはほとんど溶けず、ベンゼン、エーテルにも溶けないが、アルカリ水溶液には塩を生成して溶解する。テレフタル酸とグリコールのポリエステル(ポリエチレンテレフタレート、PET)は、日本では「テトロン」の商品名で知られ、合成繊維として多量に生産されているほかに、飲料容器用の合成樹脂(ペットボトル)として広く用いられている。また、1価の脂肪族アルコールとのエステルはプラスチックの可塑剤として用いられている。
[廣田 穰]