〈しぐさ(科)〉と〈せりふ(白)〉を中心としたいわゆる〈科白劇(かはくげき)〉に対し,舞踊を主要素として仕組んだ劇のこと。歌舞伎風の呼名でいえば,〈所作事(しよさごと)〉〈振事劇(ふりごとげき)〉がこれにあたる。舞踊により単なる場面や情景を舞台上に示すだけでなく,それらの有機的な連関によって,なんらかのストーリーを構成するものをいう。舞踊を主体とする以上,当然,歌謡,音楽を伴うのを普通とする。また一口に舞踊といっても,写実的な動作の模倣を含むものから,抽象的・律動的な運動に終始するものまで,いろいろな種類の形態がある。したがって数多い舞踊劇もまた,この両者がどんな関連の仕方をするかで,それぞれ特色ある構造を示す。ヨーロッパでも東洋でも,舞踊劇は古い歴史をもつが,日本の場合,全体として身ぶり的要素が強く,歌謡を伴うものが多い。ヨーロッパでは,バレエにその好例を見るように,運動的舞踊を中心に歌謡をもたぬものが主流である。前者の具体的例として,古く神楽(かぐら)や舞楽も舞踊劇の一種であり,能もその性格を備え,とくに江戸時代初期のお国歌舞伎,若衆歌舞伎は単純な舞踊劇であった。以後完成した野郎歌舞伎においても,舞踊は音曲とともにその根本要素となり,純粋な所作物はもちろん,科白を主とする普通の劇においても,舞踊的・様式的演技は随所に見られる。歌舞伎俳優が同時に舞踊の名手である場合の多いことは,この間の事情をよく物語る。
明治になり,坪内逍遥が新楽劇論(《新楽劇論》)を提唱して新しい舞踊劇を試作し,大正末期以降は,A.パブロワはじめ多くの海外舞踊家が来日し,新舞踊劇はこれらを契機に急速な発展をみた。ヨーロッパでは,バレエがあらゆる舞踊劇を集大成した観があり,これは詞章の助けをかりず,踊り手の肉体そのものを表現素材の中心とする点,きわだった特色を見せるものである。
執筆者:木檜 禎夫
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
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