日本大百科全書(ニッポニカ) 「ゲジ」の意味・わかりやすい解説
ゲジ
げじ / 蚰蜒
house-centipede
節足動物門唇脚(しんきゃく)綱ゲジ目Scutigeromorphaの陸生動物の総称。ゲジゲジともいう。ムカデ類にごく近縁な動物であるが、背板が外見上8枚しかなく、そのおのおのの後縁中央に呼吸孔(気門)があるので背気門類ともいう。胸板は15個で、歩肢(ほし)も15対ある。触角も歩肢も数多い節に分かれ、細長くしなやかで、音もなくすばやく走り回る。敵に襲われると歩肢を切断して逃げる(自切)。
昆虫と同じような大きく発達した複眼を1対もち、おもに草むらに生活していて小昆虫などを捕食している。一見、全身が脚(あし)だらけという感じで、不愉快な動物の代表にされるが、家屋内にもしばしば出没し、屋内にすむゴキブリやナンキンムシなどを餌(えさ)としている隠れた益虫である。6~11月ごろまでの間、成熟した雌は断続的に産卵する。卵は1個ずつ表面に泥をなすりつけられ、地表の割れ目に放置される。3週間ぐらいで孵化(ふか)した幼虫は4対の歩肢しかないが、脱皮ごとに胴節数と歩肢対数が増えてゆき、約2年を経て成体になる。越冬は幼虫か成虫で行われるが、野外では洞穴の中で越冬している集団がみられる。
日本には、体長3センチメートル以下で3本の青緑色の縦筋(すじ)のあるゲジが全国に分布し、それより大形で背が黒く、各背板後縁が赤橙(せきとう)色の斑紋(はんもん)となっているオオゲジが関東地方以南に分布している。日本では古くから「ゲジゲジに頭をなめられるとはげになる」という俗説があるが、そのような事実はなく、気味悪くてもゲジ類が人に害を与えることはまったくない。
[篠原圭三郎]