日本大百科全書(ニッポニカ) 「ゲノッセンシャフト」の意味・わかりやすい解説
ゲノッセンシャフト
げのっせんしゃふと
Genossenschaft ドイツ語
今日のドイツでは主として協同組合をさすものとして用いられているが、日本ではドイツの歴史学および社会科学の影響のもとに主として法制史と社会学において用いられ、前者においては組合あるいは団体、後者においては協同体などの訳語があてられている。この語に最初に重要な意味をもたせたのは、ドイツ歴史法学を代表するギールケである。彼は、人間は社会的存在であり、目的を達成するためにつねに集団生活を営むとするが、集団目的の達成は、少数者の意志への成員の服従による場合と、成員の協同による場合とがあるとして、前者を支配、後者を協同体(あるいは団体)とよび、両者の原形が家族にみられると考えた。すなわち親子関係は支配を、兄弟姉妹関係は協同を示すわけである。しかもこの協同体は、自然発生的な原始的共同体とは異なり、成員の自由意志に基づいて契約によって成立するものであることに特色をもつ。
社会学においてこの概念に注目したのはテンニエスであり、彼は社会の歴史的変動をゲマインシャフトからゲゼルシャフトへととらえながらも、ゲマインシャフトが社会の基礎をなすとする考えから、1910年代の協同組合運動のなかに、ゲマインシャフトとゲゼルシャフトの総合、すなわちゲノッセンシャフトを認めようとした。
[居安 正]