ゲーデルの不完全性定理(読み)げーでるのふかんぜんせいていり

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ゲーデルの不完全性定理」の意味・わかりやすい解説

ゲーデルの不完全性定理
げーでるのふかんぜんせいていり

数学で用いる論理を含み、自然数の理論が展開でき、その公理系推論規則を実際に与えることができるような形式的体系では、その体系が無矛盾であれば、肯定否定証明できない(決定不能)ような命題(その体系で形式化された論理式)がある、という定理である。ゲーデルによって証明された(1931)。ゲーデルは、形式的体系で用いる記号として自然数を採用し、「論理式」「証明」といった概念数論の概念に直し、「定理である」「無矛盾である」といった命題を数論の命題にし、決定不能な命題Aを構成するきわめて一般的な手法によって定理を証明した。この手法は、ペアノの自然数論、ツェルメロ‐フレンケルの集合論など、知られているほとんどの形式的体系に適用できる。さらに、もとの形式的体系に、このAあるいはAの否定を公理として加えれば、同じ手法で、拡張された体系で決定不能なA′が構成される。また、この数論の命題Aは、形式化されない数学では、数論的に正しい命題であることがわかり、数学の体系の形式化の限界を示すものといえる。命題Aを、「その形式的体系から矛盾が証明できない」、すなわち「その形式的体系は無矛盾である」という。同様に決定不能な命題につくりかえることができる。これから、自然数論を含む数学の形式的体系の無矛盾は、その形式的体系のなかでは証明されないことになり、こうした体系の無矛盾性の証明の困難さを示している。

[西村敏男]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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