イタリアの数学者、論理学者。クーネオ近くに生まれる。トリノ大学に学び、1880年学位を得た。同大学で教壇に立ち、1895年以降、終生、同大学正教授であった。彼の研究は直観によらないで幾何学を建設するという幾何学の公理化の試みで、定義、公理、未定義語の選択採用を明確にし、一種の数学的論理学を意図したものであった。これはやがてヒルベルトの『幾何学基礎論』(1899)に結実することになるが、結合の公理と順序の公理に関する研究(1889)は著名であり、1890年には平面上のすべての点を通る「ペアノ曲線」を構成した。1891年には数学雑誌を創刊し、この雑誌で「数学的論理学の公式」「数の概念について」といった論文を発表、そこで「ペアノの記号」を使って「ペアノの公理」の考えを展開し、記号論理学の開拓者とされる。数学上の業績のほか、国際語として「変化のないラテン語」Latino sine flexioneの創案(1903)もある。
[藤村 淳]
イタリアの数学者,論理学者。1880年トリノ大学を卒業後,直ちに同大の教職に就き,95年からは終生,数学の正教授の地位にあった。ペアノがみずからの業績の中でもっとも重要だと考えたものは解析学に関するものであった。その分野で彼は,選択公理を初めて指摘したり,空間上のすべての点を通過する連続曲線を構成して,常識的曲線概念を批判的に再定式化したりした(1890)。ペアノが今日著名なのは,むしろ数学における公理論的方法や記号論理学の推進者としてである。自然数論に関する有名なペアノの公理は,《数論原理》(1889)において初めて述べられた。このような考案は,彼自身が創刊した雑誌《数学評論》(1891-1906)の中でさらに展開され,〈フォルムラリオ公式集シリーズ〉と呼ばれる一連の論文に結晶した。創刊号には論文《数理論理学の公式》《数の概念について》が掲載されている。このような試みは,ブラリ・フォルティCesare Burali-Forti(1861-1931)やB.A.ラッセルなどの後継者を生んだが,ペアノ自身は論理主義も形式主義も支持しなかった。ペアノはそのうえ,科学のための国際語建設を企て,1903年には《曲用なしのラテン語について》を発表した。この試みは,《ラテン語-イタリア語-フランス語-英語-ドイツ語の公通語彙集》(1915)としてまとめられている。
執筆者:佐々木 力
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…曲面はこれらの人たちに続いて,C.ジョルダン,シュレーフリL.Schläfli(1814‐95),ディックW.F.A.von Dyck(1856‐1934)らによっても研究され,19世紀末葉には閉曲面の同相による分類が完成した。曲線については,〈自分自身と交わらない閉曲線が平面上にあるとき,それは平面を内と外の二つの領域に分かつ〉というジョルダンの定理が証明され(1893),また正方形の内部をうめつくす連続曲線がG.ペアノによって発見されて(1890),曲線や次元の定義が問題となった。リーマンは前記の講演において,n次元多様体の概念を導入して空間の概念を拡張し,その幾何学を考えることを提唱したが,ベッチE.Betti(1823‐92)はその考えに沿って多様体の高次元連結度を表す位相的不変量としてのベッチ数の概念を得た(1870)。…
…1902年に辞典が出版される),〈ラティノ・シネ・フレクシオネLatino sine flexione〉(〈屈折なしのラテン語〉の意。1903年にイタリアの数学者G.ペアノが発表),〈インテルリングワInterlingua〉(〈国際語〉の意。上記〈ラティノ・シネ・フレクシオネ〉に改変を加えたもので1909年に発表),〈オクツィデンタルOccidental〉(〈西欧語〉の意。…
…かつての国際語を学びやすい形に改良し復活させようとする動きは,フェーゲ・ド・ビルヌーブJoachim Faiguet de Villeneuve(1703‐80)による冠詞を持たない新ラテン語〈新言語Langue nouvelle〉など,フランス革命と連動して目だちはじめた。しかし最大の成果は数学者ペアノの創造になる〈インテルリングアInterlingua〉(1903)で,20世紀初頭にはエスペラントと並ぶ人工言語へと発展した。
[評価]
人工言語案はニュートンやボイルなど科学者にも支持され,やがて学術用語や記号の統一という成果を見たが,他方では自国語の純化をめざす各国の文学者や言語学者の指弾を浴び,たとえばJ.スウィフトは《ガリバー旅行記》で人工言語案の愚かさをしんらつに風刺した。…
※「ペアノ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
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