ペアノ(読み)ぺあの(英語表記)Giuseppe Peano

デジタル大辞泉 「ペアノ」の意味・読み・例文・類語

ペアノ(Giuseppe Peano)

[1858~1932]イタリア数学者自然数公理論を最初に展開し、数学を純粋に論理的に組み立てようとした。その公理群ペアノの公理として知られ、また、平面上のすべての点を通る連続曲線ペアノ曲線として知られる。

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精選版 日本国語大辞典 「ペアノ」の意味・読み・例文・類語

ペアノ

  1. ( Giuseppe Peano ジュゼッペ━ ) イタリアの数学者。記号論理学開拓者。自然数論について、ペアノの公理を発表、数学の命題論理記号を用いて表現した。平面上のすべての点を通る連続曲線はペアノ曲線として知られる。(一八五八‐一九三二

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「ペアノ」の意味・わかりやすい解説

ペアノ
ぺあの
Giuseppe Peano
(1858―1932)

イタリアの数学者、論理学者。クーネオ近くに生まれる。トリノ大学に学び、1880年学位を得た。同大学で教壇に立ち、1895年以降、終生、同大学正教授であった。彼の研究直観によらないで幾何学を建設するという幾何学の公理化の試みで、定義、公理、未定義語の選択採用を明確にし、一種の数学的論理学を意図したものであった。これはやがてヒルベルトの『幾何学基礎論』(1899)に結実することになるが、結合の公理と順序の公理に関する研究(1889)は著名であり、1890年には平面上のすべての点を通る「ペアノ曲線」を構成した。1891年には数学雑誌を創刊し、この雑誌で「数学的論理学の公式」「数の概念について」といった論文を発表、そこで「ペアノの記号」を使って「ペアノの公理」の考えを展開し、記号論理学の開拓者とされる。数学上の業績のほか、国際語として「変化のないラテン語Latino sine flexione創案(1903)もある。

藤村 淳]

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改訂新版 世界大百科事典 「ペアノ」の意味・わかりやすい解説

ペアノ
Giuseppe Peano
生没年:1858-1932

イタリアの数学者,論理学者。1880年トリノ大学を卒業後,直ちに同大の教職に就き,95年からは終生,数学の正教授の地位にあった。ペアノがみずからの業績の中でもっとも重要だと考えたものは解析学に関するものであった。その分野で彼は,選択公理を初めて指摘したり,空間上のすべての点を通過する連続曲線を構成して,常識的曲線概念を批判的に再定式化したりした(1890)。ペアノが今日著名なのは,むしろ数学における公理論的方法や記号論理学の推進者としてである。自然数論に関する有名なペアノの公理は,《数論原理》(1889)において初めて述べられた。このような考案は,彼自身が創刊した雑誌《数学評論》(1891-1906)の中でさらに展開され,〈フォルムラリオ公式集シリーズ〉と呼ばれる一連の論文に結晶した。創刊号には論文《数理論理学の公式》《数の概念について》が掲載されている。このような試みは,ブラリ・フォルティCesare Burali-Forti(1861-1931)やB.A.ラッセルなどの後継者を生んだが,ペアノ自身は論理主義も形式主義も支持しなかった。ペアノはそのうえ,科学のための国際語建設を企て,1903年には《曲用なしのラテン語について》を発表した。この試みは,《ラテン語-イタリア語-フランス語-英語-ドイツ語の公通語彙集》(1915)としてまとめられている。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ペアノ」の意味・わかりやすい解説

ペアノ
Peano, Giuseppe

[生]1858.8.27. クネオ
[没]1932.4.20. トリノ
イタリアの数学者。トリノ大学に学び,トリノ大学員外教授 (1890) ,教授 (95) 。トリノ陸軍大学教授を兼任 (86~1901) 。共編で出版した『数学公式集』 (1895~1908) は,論理記号を用いて,基本的公理から全数学を展開しようと意図したもので,20世紀初頭の数学の抽象化に大きな影響を与え,特に N.ブールバキの仕事や B.ラッセルと A.N.ホワイトヘッドの『数学原理』 (3巻,10~13) に影響を与えた。『微分法と積分法の原理』 (1884) と『無限小解析講義』 (2巻,93) の2著は,A.コーシー以後の微積分学の重要なテキストである。彼はまた,『無限小解析の幾何学的応用』 (87) において,弧の長さ,曲面の面積の新しい定義を与えた。また彼は Latino sine Flexioneという人工言語の創作でも知られている。

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百科事典マイペディア 「ペアノ」の意味・わかりやすい解説

ペアノ

イタリアの数学者,論理学者。1890年トリノ大学教授。幾何学,不変式論,微分方程式論等を研究,ペアノ曲線の実例を初めて紹介。近代記号論理学の開拓者の一人で,現用の論理記号を導入した。

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世界大百科事典(旧版)内のペアノの言及

【幾何学】より

…曲面はこれらの人たちに続いて,C.ジョルダン,シュレーフリL.Schläfli(1814‐95),ディックW.F.A.von Dyck(1856‐1934)らによっても研究され,19世紀末葉には閉曲面の同相による分類が完成した。曲線については,〈自分自身と交わらない閉曲線が平面上にあるとき,それは平面を内と外の二つの領域に分かつ〉というジョルダンの定理が証明され(1893),また正方形の内部をうめつくす連続曲線がG.ペアノによって発見されて(1890),曲線や次元の定義が問題となった。リーマンは前記の講演において,n次元多様体の概念を導入して空間の概念を拡張し,その幾何学を考えることを提唱したが,ベッチE.Betti(1823‐92)はその考えに沿って多様体の高次元連結度を表す位相的不変量としてのベッチ数の概念を得た(1870)。…

【国際語】より

…1902年に辞典が出版される),〈ラティノ・シネ・フレクシオネLatino sine flexione〉(〈屈折なしのラテン語〉の意。1903年にイタリアの数学者G.ペアノが発表),〈インテルリングワInterlingua〉(〈国際語〉の意。上記〈ラティノ・シネ・フレクシオネ〉に改変を加えたもので1909年に発表),〈オクツィデンタルOccidental〉(〈西欧語〉の意。…

【人工言語】より

…かつての国際語を学びやすい形に改良し復活させようとする動きは,フェーゲ・ド・ビルヌーブJoachim Faiguet de Villeneuve(1703‐80)による冠詞を持たない新ラテン語〈新言語Langue nouvelle〉など,フランス革命と連動して目だちはじめた。しかし最大の成果は数学者ペアノの創造になる〈インテルリングアInterlingua〉(1903)で,20世紀初頭にはエスペラントと並ぶ人工言語へと発展した。
[評価]
 人工言語案はニュートンやボイルなど科学者にも支持され,やがて学術用語や記号の統一という成果を見たが,他方では自国語の純化をめざす各国の文学者や言語学者の指弾を浴び,たとえばJ.スウィフトは《ガリバー旅行記》で人工言語案の愚かさをしんらつに風刺した。…

※「ペアノ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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