コギト・エルゴ・スム(読み)こぎとえるごすむ

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「コギト・エルゴ・スム」の意味・わかりやすい解説

コギト・エルゴ・スム
Cogito, ergo sum

われ思惟す,ゆえにわれあり」の意。近世観念論哲学の礎石をおいたデカルトの言葉として有名だが,デカルト自身は『方法序説』第4部で Je pense,donc je suisといっているが,このラテン語形は彼のテキストにはなく,彼みずからが校閲した 1644年のラテン訳では Ego cogito,ego sumである。ここにいうコギトとは普通の「考える」だけではなく,疑うとか意欲するとか感覚するとかいったあらゆる精神の活動を含んでおり,スム主語である私は精神としての私であって肉体はいまだ含まれない。論理形式としてはデカルトはこれを何も前提にしない端的な直観であるといい,第1の原理に据えたのだが,考えるものは存在するという命題を前提とする三段論法とみる解釈もある。なお『第二省察』では懐疑より出発してまず私の存在が ego sum,ego existoとして取出され,そののちに私が考えるものであることがいわれており,『方法序説』との差異は見過しえない。またこの命題とアウグスチヌスの類似は早くから指摘されていたが,デカルトがアウグスチヌスを読んでいたとの確証はない。デカルトにあってはコギトが出発点として唯一真理であったという点でアウグスチヌスとの差異はあるが,コギトが魂の霊性を,したがって心身区別を導き出す点,またそれが神の存在の証明につながる点で両者は本質的類縁性をもっており,A.アルノーや N.マルブランシュら 17世紀の多くのカルテジアン (→カルテジアニスム ) がアウグスチニアンであったことと無縁ではない。 E.フッサールもその現象学においてこの用語を借用し,純粋自我の本質的成分とした。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「コギト・エルゴ・スム」の意味・わかりやすい解説

コギト・エルゴ・スム
こぎとえるごすむ

われ思う、故にわれ在り

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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