日本大百科全書(ニッポニカ) 「コギト」の意味・わかりやすい解説
コギト
こぎと
文芸同人雑誌。1932年(昭和7)3月創刊。44年9月廃刊。通巻146号。編集兼発行人は肥下恒夫(ひげつねお)で、同人に保田与重郎(やすだよじゅうろう)、田中克己(かつみ)、中島栄次郎、伊東静雄、伊藤佐喜雄(さきお)、蔵原(くらはら)伸二郎らがいた。誌名は、デカルトの「cogito(コギト), ergo(エルゴ) sum(スム)」(われ思う、故(ゆえ)にわれ在(あ)り)に由来する。満州事変後のロマン主義的気運のなかで、いち早く創刊された高踏的な同人雑誌で、ドイツ・ロマン派とくにシュレーゲル、ヘルダーリンの影響が強く、詩精神の高揚をうたい、日本の古典を顕彰した。保田の「戴冠(たいかん)詩人の御一人者」「和泉(いずみ)式部家集私鈔(ししょう)」などのエッセイ、伊東の「わがひとに与ふる哀歌」その他の詩が掲載され、また、同誌に載った保田執筆の『「日本浪曼(ろうまん)派」広告』は大きな反響をよんだ。
[大久保典夫]