筋炎(読み)キンエン(その他表記)myositis

翻訳|myositis

デジタル大辞泉 「筋炎」の意味・読み・例文・類語

きん‐えん【筋炎】

骨格筋に起こる炎症。最も多いのは化膿菌かのうきん感染によるもので、寒け・震えを伴って高熱を出し、筋肉が腫れて痛む。

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精選版 日本国語大辞典 「筋炎」の意味・読み・例文・類語

きん‐えん【筋炎】

  1. 〘 名詞 〙 筋肉の炎症。ふつう化膿性筋炎をさす。小さな傷、できものなどからブドウ球菌がはいり筋肉がおかされる。寒け、ふるえ、高熱ではじまり、おかされた筋肉が腫(は)れて痛む。
    1. [初出の実例]「弓削は脚の筋炎をおこして入院していた」(出典:ひとつの青春(1967)〈大原富枝〉四)

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改訂新版 世界大百科事典 「筋炎」の意味・わかりやすい解説

筋炎 (きんえん)
myositis

化膿性筋炎,外傷性骨化性筋炎,進行性骨化性筋炎などがある。

 化膿性筋炎myositis purulentaは,一般の化膿菌による感染性疾患で,その頻度は少ない。近隣の化膿性骨髄炎,化膿性関節炎などに合併して発症することが多い。鼻咽腔などの化膿巣から二次的に血行を介して感染する血行性感染には急性腸腰筋炎があり,股関節を屈曲した特有な腸腰筋肢位をとるので有名である。

 外傷性骨化性筋炎myositis ossificans traumaticaは,筋肉に外傷やくり返し小外傷が加わって筋肉内に骨化が生ずるものである。戦時にいつも鉄砲をかつぐ兵士の三角筋に生ずることが知られていた。肘関節部の骨折脱臼の際,くり返し粗暴な整復操作を行ったり,可動性増進の目的で暴力的な訓練を行うと肘関節周辺に異所性骨化を生ずる。発生のしくみについては,筋肉内の結合組織から化生によって骨が生ずるともいわれているが,判然としない。治療は,完全に成熟した骨になってから,その骨を摘出すると関節の可動性が改善される。

 進行性骨化性筋炎myositis ossificans progressivaは,全身の筋肉に異所性骨化が進行し,ついには全身の筋肉が硬直するまれな疾患である。遺伝的には優性遺伝の存在が推定される。傍脊椎筋が最も多くおかされ,肩,上腕筋,股部,下顎頭部などがこれに次ぐといわれている。骨化する前に発赤,腫張,熱感,疼痛等の炎症症状が局所おこり,数日後この症状が去ったあとに骨化が始まる。このような発作をくり返して,しだいに全身に進行性にひろがる。予後は一般に不良で,呼吸筋,咬筋などがおかされれば死亡するに至る。X線像では,筋肉,腱,腱膜等の走行と一致した樹枝状など種々の形態を呈する骨化がみられる。治療はかなり困難であるが,近年二リン酸の一種であるEHDP(ethane-1-hydroxy-1,1-diphosphonic acid)が用いられている。骨化した骨の摘出術が効を奏することもあるが,再発することも多い。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「筋炎」の意味・わかりやすい解説

筋炎
きんえん

筋が細菌やウイルス、寄生虫などに感染して筋力低下、筋痛、筋萎縮(いしゅく)などを示すものを一般的に筋炎とよんでいるが、原因不明で筋に炎症性細胞浸潤とともに四肢筋の筋力低下や筋萎縮を示してくる多発性筋炎ないし皮膚筋炎と同義語に用いられることが多い。多発性筋炎・皮膚筋炎は原因不明の特定疾患(難病)の一つで、自己免疫疾患ないし膠原(こうげん)病の一つとされている。顔面筋、頸筋(けいきん)および四肢の筋の筋力低下と筋萎縮を主とするもので、四肢のうちでも躯幹(くかん)に近い肩や腰の筋が強く冒される。皮膚の発疹(はっしん)、皮膚の萎縮や毛細血管の拡張を伴うものを皮膚筋炎とよんでいる。筋力低下とともに発熱、関節腫脹(しゅちょう)、筋痛を示すことが多く、血沈促進などの炎症所見がみられる。男女ともに発症するが、女性が多い。副腎(ふくじん)皮質ステロイド剤が著効を示すことが多い。

[里吉営二郎]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「筋炎」の意味・わかりやすい解説

筋炎
きんえん
myositis

筋肉の炎症の総称。化膿菌の感染による急性化膿性筋炎のほか,壊死や変性した筋肉が瘢痕化して線維性となる慢性線維性筋炎,機械的刺激や外傷によって筋肉内に骨組織が生じる骨化性筋炎,全身の筋肉の炎症に皮膚の紅斑を伴う多発性筋炎 (皮膚筋炎) ,関節リウマチに続発するリウマチ性筋炎などがある。このほか結核や梅毒による筋炎もまれにある。

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