現代日本語の指示代名詞は、事物「これ・それ・あれ・どれ」、方角「こちら・そちら・あちら・どちら(こっち・そっち・あっち・どっち)」、場所「ここ・そこ・あそこ・どこ」というように、「こ・そ・あ・ど」という整然とした体系をなしている。この現象は、名詞的な語ばかりでなく、連体詞的な「こんな・そんな・あんな・どんな」および「この・その・あの・どの」や、副詞的な「こう・そう・ああ・どう」にもみいだされる。これは、「こ」系で近称を、「そ」系で中称を、「あ」系で遠称を、「ど」系で不定称を表すものである。佐久間鼎(かなえ)はこれを「〈こそあど〉の体系」とよんだ。なお、近称とか遠称とかいっても、単に距離が問題なのではなく、「こ」は話し手の勢力圏にあること、「そ」は聞き手の勢力圏にあること、「あ」は両者の勢力圏の外にあることを示すものである。
[山口佳紀]
『佐久間鼎著『現代日本語の表現と語法』(1936・厚生閣)』
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
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