東インド,オリッサ州ブバネーシュワルの南東約66kmの海岸にほど近い村で,太陽神スーリヤを祀る巨大な石積寺院で知られている。正しくはコーナールカKoṇārka。ガンガ朝のナラシンハデーバ王(在位1238-64ころ)によって建立され,本殿の高塔は崩壊したが,前殿ですら高さ約30mある。本殿と前殿との基壇側面は24個の大きな車輪を刻み7頭の馬が引く山車の形をとり,さらにその前方に舞楽殿がある。これらの壁面や前殿の屋上のテラスには,多くの奏楽舞踊の人物像,さまざまな動物像,官能的な男女の抱擁像(ミトゥナ)などがあり,風化のため表面がやや荒れてはいるものの柔らかで豊かな肉体表現に特色がある。
執筆者:肥塚 隆
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
インド、オディシャ(オリッサ)州にあるヒンドゥー教の遺跡。ガンガー朝のナラシンハデーバ1世(在位1238~1264)によって建てられた太陽神スーリヤを祀(まつ)る寺院で、南インドの中世ヒンドゥー教の寺院建築・彫刻の典型を示すものとして名高い。俗称「ブラック・パゴダ」はベンガル湾を航海する船の目標となったためつけられたもの。現在、広大な寺域にあるのはピラミッド形の前殿(高さ約33メートル)だけで、本殿はほとんど破壊されて基壇だけが残っている。本殿と前殿の高い基壇の両側面に、片側だけ12個ずつ彫られた直径約3メートルの車輪は、建築全体を大きな山車(だし)になぞらえてつくられたもので、車の浮彫りの装飾と基壇の側壁には、彫刻で男女交合の大胆なシーンが数多く表されている。また寺院守護のためにつくられた寺域両側の馬と象の彫刻は、巨像として優れたものである。1984年に世界遺産の文化遺産として登録されている(世界文化遺産)。
[永井信一]
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