コルビエール(読み)こるびえーる(英語表記)Tristan Corbière

日本大百科全書(ニッポニカ) 「コルビエール」の意味・わかりやすい解説

コルビエール
こるびえーる
Tristan Corbière
(1845―1875)

フランスの詩人ブルターニュの海岸地方に生まれる。船乗りで海洋冒険小説家の父の影響で早くから海にあこがれるが、中学時代リウマチにかかり、夢を断たれる。この挫折(ざせつ)感が自らの醜貌(しゅうぼう)への過剰な意識と重なり、屈折の多い複雑な心理を形成していった。詩作品は1873年にパリで自費出版された『黄色い恋』にまとめられているが、このなかで自らを犬、ひきがえる、蛇などに擬して永遠の女性の愛を請い、海の冒険の見果てぬ夢を追い、生の倦怠(けんたい)と孤独を歌い、ことば遊びと醒(さ)めたユーモア自嘲(じちょう)を繰り返した。コルビエール没後の83年、ベルレーヌが雑誌『リュテス』で「呪(のろ)われた詩人たち」の一人としてその詩業を紹介する。のち、シュルレアリストのブルトンは「睡眠への連祷(れんとう)」を自動書記の先駆的作品と評価した。

[遠山博雄]

『福井芳男他編『フランス文学講座3 詩』(1979・大修館書店)』

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「コルビエール」の意味・わかりやすい解説

コルビエール
Corbière, Tristan

[生]1845.7.18. ブルターニュ,コートコンガル
[没]1875.3.1. ブルターニュ,コートコンガル
フランスの詩人。本名 Edouard Joachim Corbière。父は海洋小説で人気のあったエドゥアール・コルビエール。病弱のため勉学中断,家族の保養地ロスコフに住んだ。一時パリへ出て,1873年,雑誌『パリ生活』 La Vie parisienneに詩と小説を寄稿,翌年唯一の詩集『黄色の恋』 Les Amours jaunesを自費出版。 10年後,ベルレーヌが『呪われた詩人たち』 (1884) で,マラルメ,ランボーらと並べて称賛して以来,その不協和音に満ちた爆発的なリズム,激しい感情の直接的表現,辛辣だが暖かみのあるユーモアによってきわめて高い評価を得た。

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