翻訳|cold chain
外温のもとでは品質の変化しやすい生鮮食品,冷凍食品,医薬品などを,生産から消費まで一貫して低温の状態で流通させる仕組み(低温流通機構)をいう。すでに前2500年ころ,エジプトでは水の蒸発作用を利用して物資を保存しはじめているが,低温での貯蔵・輸送機能を組み合わせたコールド・チェーンの歴史は比較的新しく,19世紀末の冷凍機完成以降のこととなる。オーストラリアの牛肉が低温運搬船によってヨーロッパへ輸送され,アメリカにおいては,西海岸の青果物が東海岸へ低温輸送されてきた。日本の低温輸送は,明治時代から魚の氷詰輸送を中心に発展し,遠洋漁業の促進にも貢献してきた。コールド・チェーンの基本的な役割は品質の保持であり,生鮮食料品に対する酸化による方法や防腐剤を添加する方法と比べて,自然の状態で風味を保つことができる。これによって,生鮮食品の遠距離輸送と長期保存が可能となり,国際的流通の進展,特産品市場の広域化,物資供給の周年化,需給の調整,さらには価格の安定にも役立っている。スーパーマーケット,コンビニエンス・ストア等では,生鮮・冷凍食品などを産地やメーカーから集配センターを経由して各店舗へ低温配送している。また,チェーン化で発展した外食産業や学校,会社への集団給食事業では,関連食品をセントラル・キッチンで調理し,冷凍して各食堂に配送している。このような仕組みとともに,消費の多様化,都市における夫婦の共働きやまとめ買い傾向もあって,コールド・チェーンの拡充はいっそう必要となってきている。
コールド・チェーンの温度帯は,〈冷蔵〉(10~2℃),〈氷温冷蔵〉(2~-2℃),〈冷凍〉(-18℃以下)を基準としており,冷蔵は新鮮な青果物,氷温冷蔵は食肉,魚介,果汁,乳製品,卵,冷凍は凍結した青果,食肉,魚介,調理食品などに利用されている。このコールド・チェーンの施設は,工場や配送センターでの冷蔵庫,冷蔵貨車,大・小型の保冷トラック,低温運搬船,および航空を含めた各輸送機関で使われている冷凍コンテナー,店頭における冷蔵ショーケース,さらに家庭での冷蔵庫などである。コールド・チェーンは,消費・流通構造が変わりつつある食品を中心に展開してきたが,最近では医薬品,血清,さらには精密機器(この場合は湿度管理も重要になる)なども対象とし,生産技術の向上にもかかわりが深い。
執筆者:忍田 和良
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(原田英美 ライター / 2011年)
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低温流通体系とも訳される。生鮮食料品を生産者から消費者まで、冷凍、冷蔵、低温の状態で一貫して流通させるシステムをいう。生鮮食料品は、その性格から生産状態が安定しないため、価格の変動など、消費者だけでなく生産者にとっても種々問題を内包している。そこで、生鮮食料品を生産地で低温処理し、冷蔵(凍)トラックないし貨車により運搬し、冷蔵(凍)ショーケース、家庭の冷蔵(凍)庫と一貫して流通させることにより、鮮度の維持、価格の安定、衛生状態の確保に大きく寄与することができるようになった。第二次世界大戦後アメリカで急速に発展し、日本にも導入されて、流通革命の有力な担い手として普及してきた。
[森本三男]
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