改訂新版 世界大百科事典 「コールラウシュの法則」の意味・わかりやすい解説
コールラウシュの法則 (コールラウシュのほうそく)
Kohlrausch's law
F.W.G.コールラウシュが1875年に発見した法則。〈コールラウシュのイオン独立移動の法則〉ともいう。無限希釈溶液中における電解質の当量伝導率Λ∞は,電解質を構成している陽イオンおよび陰イオンの無限希釈状態におけるイオン当量伝導率λ+∞およびλ-∞の和に等しい,という法則。無限希釈状態ではイオン間の相互作用を無視できるから,電場下における個々のイオンの移動速度(したがってイオン当量伝導率)は,そのイオン自身の性質(形,大きさ,電荷など)と媒質の性質(温度,圧力,粘度など)とだけで決まるからである。弱電解質HAの無限希釈における当量伝導率を電気伝導の実験値から直接決定するのは困難であるが,この法則を用いると適当な強電解質についての測定値からΛ∞HAを求めることができる。たとえば,酢酸については,酢酸ナトリウム,塩酸,および塩化ナトリウムの当量伝導率を用いて次式から計算すればよい。
Λ∞(CH3COOH)=Λ∞(CH3COONa)+Λ∞(HCl)-Λ∞(NaCl)
執筆者:玉虫 伶太
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報