当量電気伝導率(読み)トウリョウデンキデンドウリツ

化学辞典 第2版 「当量電気伝導率」の解説

当量電気伝導率
トウリョウデンキデンドウリツ
equivalent conductance, equivalent conductivity

1種類の電解質のみを含む溶液単位当量濃度当たりの電気伝導性を表す量.単位は S cm2.当量濃度 ce電解質溶液比電気伝導率をκとすると,当量電気伝導率Λは次式で与えられる.

Λ = (1000/ce

比電気伝導率は溶液の単位体積当たりの電気伝導性の大小を表すのに対し,当量電気伝導率は溶質の互いに等しい量について比較することになるので,溶質の特性を明らかにする特徴がある.当量電気伝導率は一般に濃度の減少とともに増大し,十分希薄な溶液では,ある極限値 Λ に到達する傾向を示す.この極限値を無限希釈における当量電気伝導率あるいは極限当量電気伝導率という.当量電気伝導率の濃度変化は形式的に次の三つの型に分類される.
(1)アルカリ金属のハロゲン化物で代表される強電解質類で,全濃度範囲にわたりΛの値が大きく,その濃度変化が緩やかであり,希薄溶液中では次式を満たす.

Λ = ΛAce1/2 (A定数)

この式は,多くの測定値を基礎にF.W.G. Kohlrauschにより提出された経験式であるが,その後L. Onsager(オンサガー)によりデバイ-ヒュッケルの理論を拡張して理論的に検証された.
(2)酢酸などを代表とする弱電解質で,Λの値は濃度の増加とともに急激に減少し,弱電解質の解離度をαとすれば次式で表される.

Λ = α Λ

これはS.A. Arrhenius(アレニウス)の電離論による式にほかならない.
(3)上記二つの型の中間性質を示すもので,硫酸ニッケルのような中間電解質とよばれるものがこれに属する.当量電気伝導率の濃度変化の原因としては,
(ⅰ)解離度の濃度による変化と,
(ⅱ)イオンの移動度の濃度による変化,
の二つが考えられ,弱電解質においてはおもに(ⅰ)の原因が,強電解質ではおもに(ⅱ)の原因が重要な役割を果たしている.

出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「当量電気伝導率」の意味・わかりやすい解説

当量電気伝導率
とうりょうでんきでんどうりつ
equivalent conductivity

単に当量伝導率,当量導電率,または当量伝導度ともいう。1グラム当量の溶質の占める溶液の体積を V ,その溶液の比電気伝導率をκ (抵抗率の逆数) とするとき,当量電気伝導率 ΛΛ=κV で定義される。電解質溶液において Λ は濃度の関数で,濃度が小さいほど Λ は大きくなる。無限希釈の極限の溶液の当量電気伝導率を Λ0 (極限当量電気伝導率) ,陰,陽それぞれの1グラム当量のイオンの伝導率を λ0- ,λ0+ とするとき,Λ0=λ0++λ0- となる。すなわち無限希釈における電解質溶液の伝導率は陰,陽両イオンの伝導率の和に等しい。これをコールラウシュ法則 (イオン独立移動の法則) という。濃度が大きくなると Λ が小さくなる原因は,主として電解質が電離してイオンを生じる割合 (→電離度 ) が小さくなるからであり,さらにイオン間相互作用により陰,陽両イオンが互いに移動を妨害するからである。

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