アメリカのフェデラル・ファンド・マーケット,イギリスのコール・割引市場に相当する。金融機関や証券会社等は日々の営業活動において一時的に資金繰りにゆとりが生じたり,不足に陥ったりするが,こうした短期の資金過不足を相互に,また円滑に融通し合う貸借取引の場を総称して一般に短期金融市場と呼ぶ。コール市場は,伝統的かつ代表的な短期金融市場で,金融機関が相互に支払準備の過不足を調整するため,ごく短期の資金(コールとは〈呼べば戻って来る〉の意)をやりとりする場であって,市場参加者が金融機関を主体に一定範囲に限定されたインターバンクの市場である点で,現先市場,譲渡性預金(CD)市場など短期金融市場を形成するオープン市場と基本的に異なる。コール市場における取引は,すべて短資会社を相手として行われる。資金の貸手(出手)は資金(コール・ローン)を短資会社あてに放出し,借手(取手)は資金(コール・マネー)を短資会社から取り入れるのであり,短資会社はこの間の出合いを自己勘定でつけている。
日本には資金偏在といわれる現象が存在し,コール市場において,都市銀行が取手となり,都市銀行以外の金融機関が出手となるというパターンが固定化してきたという特色がみられる(〈資金ポジション〉の項参照)。コール市場で取引される資金は,現在,半日もの,無条件もの,期日もの(2~7日)の3種類であり,このように期間がごく短期の点において,コール市場と同じ性格の手形売買市場(手形市場)と区別される。日本では,半日ものを除きすべて国債など担保付きの取引である。コール資金の取引に適用される金利をコール・レートといい,短期金融情勢を判断するうえでの重要な指標となっている。コール・レートは,もともと弾力的に動いてきたが,1979年4月出手,取手双方の合意にもとづく建値制(市場参加者にとって均一なレートが前日に明らかにされている制度)が廃止され,金利が完全に自由化されて以降,公定歩合に規定されつつも,その時々の短期金融市場における資金の需給関係をきわめて敏感に反映して動くようになっている。また日本銀行は,日々の金融調節において,日本銀行信用(貸出し,オペ(オペレーション)など)の増減を通じて金融機関の支払準備に働きかけ,コール市場におけるコール資金需要,供給の地合いを形成し,コール・レートに影響を与えている。日本銀行は,短資会社に対する貸出し(資金放出)や売出手形(資金吸収)などにより,コール市場の需給を直接動かすこともある。コール・レートとオープン市場でのレートとの金利裁定を通じて各市場の金利が短期間に収れんすることとなるが,そうした金利裁定取引の活発化は,金融政策の効果が波及する重要な経路となっている。
執筆者:島 謹三
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…略して手形市場ということも多い。金融機関が相互に短期の資金を融通し合う貸借取引の場の一つで,コール市場と並びインターバンクの短期金融市場を形成している。手形割引市場ともいうことがある。…
…前者はほとんどいずれの国においても非常によく発達しており,銀行・金融機関が活発に短期資金を貸借し合っている。 日本でいえば,コール市場,手形市場がこれに該当する。後者のオープン・マネー・マーケットは,国によって発達の程度が大きく異なっている。…
※「コール市場」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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